墓じまいの有力な移動先に納骨堂が台頭した事情 斬新な墓、20年前に拒否されなかった自動搬送式

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墓石事業を中心に展開していたニチリョクが自動搬送式納骨堂の販売代行を始めたのは1999年のこと。東京ドームにほど近い浄土真宗興安寺の依頼で開発した納骨堂専用棟「本郷陵苑」が第1号だ。

本郷陵苑は宗旨宗派不問で門戸を開き、当時は契約時50万円+年間管理費で提供していた。1契約につき2体までの骨壺が収納可能で、現在も特製の供養袋を使えば1契約のまま6~8体まで対応できる。夫婦墓や一族の墓のような使い方ができ、やがては同施設にある管理費がいらない永代合祀墓に移す道筋も用意されている。

本郷陵苑
本郷陵苑(写真:ニチリョク)
本郷陵苑の参拝フロア
本郷陵苑の参拝フロア(写真:ニチリョク)

一般的な屋外のお墓の平均購入価格が長らく160万~180万円前後で推移している(※)ことを考えると低価格だが、リリースからしばらくはほとんど売れなかったという。当時を知る執行役員で経営統括本部業務統括部長の染谷英介氏は、「お墓は屋外にあるべきという考えが根強く、それを覆すほどの認知ができていませんでした」と振り返る。

※・・・鎌倉新書「いいお墓」による「お墓の消費者全国実態調査(2018~2022)」から

納骨堂はお墓と並ぶ有力な選択肢ではなかった

納骨堂自体は以前から存在した。ただし、それまでの納骨堂は一時保管場所としての位置づけが強く、お墓と並ぶ選択肢として見なすのは一般的ではなかった。1990年代はそれまでと異なる永続管理を想定した納骨堂が都市部で試行錯誤されていた時期で、霊堂の壁一面に並んだロッカーに骨壺を納める納骨堂や、陵墓型とは異なる仏壇型の自動搬送式納骨堂などがいくつも誕生している。

しかし、いずれも滑り出しは順調とはいかなかったようだ。1996年発行の『週刊新潮』に載った記事が端的に当時の様子を物語っている。

<ロッカー式墓地というのは、深刻な問題になりつつある“墓地不足”解消のために、ここ数年都会に登場したマンション形式の霊堂のこと。墓参りには近いし、掃除も簡単とあって、さぞや人気沸騰かと思いきや・・・。やはり、人間は、死んだあとまでロッカーを利用したくはないらしい。>

(『週刊新潮』1996年6月27日号「新聞閲覧室」より)

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