「ロイホのパンケーキ酷評」シェフを批判は犯罪? 弁護士が解説「ネット上の酷評口コミの危険性」

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ネットの口コミ
インターネット上には辛辣な口コミが載ることもありますが…(写真:Taka/PIXTA)

11月26日に放送されたTBSの「ジョブチューン」でファミリーレストラン「ロイヤルホスト」のメニューを料理人がジャッジする企画がネットで話題となった。

番組はロイヤルホストの従業員イチ押しメニュー10品を「超一流料理人」がジャッジするというもので、中でも4位にあがった「パンケーキ」について、料理人7人中6人が「不合格」の札を上げ辛口コメントをしたことが物議をかもした。

ネットでは「感じの悪い物言い」「見ていて不快」「傲慢すぎる」など料理人への批判が集まっており、コメントしたシェフの店のGoogleマップには番組終了後、「最低」「デッカいさらにちんまりした料理乗っけてるだけですね」など星1つのレビューも書き込まれている。

こうした状況に、「番組に本気で怒るのはおかしい」「中傷したら負け」など批判をとがめる声も出てきているが、法的には批判はどこまで許されるのだろうか。櫻町直樹弁護士に聞いた。

“論評”はどこから「名誉毀損」になるのか

——シェフへの批判が殺到していますが、一般的にどこまでが「論評」になるのでしょうか。法的にアウトとなるラインも教えてください。

当記事は弁護士ドットコムニュース(運営:弁護士ドットコム)の提供記事です

「法的にアウトとなるライン」について、名誉毀損になるかどうかという観点から検討しましょう。

名誉毀損とは、人(個人だけでなく法人なども含みます)の品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的評価を低下させる表現を、不特定または多数が認識し得る状態に置くことをいいます(最判平9年9月9日民集51巻8号3804頁など)。

そして、表現が「事実を摘示するもの」か、あるいは「意見・論評を表明するもの」か、いずれであっても、人が社会から受ける客観的評価を低下させるものであれば、名誉毀損が成立し得ることになります。

なお、その区別については、以下のような基準が示されています。

「当該表現が証拠等をもってその存否を決することが可能な他人に関する特定の事項を明示的又は黙示的に主張するものと理解されるときは、当該表現は、上記特定の事項についての事実を摘示するものと解するのが相当である」

「そして、上記のような証拠等による証明になじまない物事の価値、善悪、優劣についての批評や論議などは、意見ないし論評の表明に属するというべきである。」(最判平16年7月15日民集 58巻5号1615頁)。

このように、ある表現が「事実の摘示」であるか、「意見・論評を表明するもの」であるかの区分が問題となるのは、いずれにあたるかによって名誉毀損が正当化される場合の要件が異なるからです。

意見・論評の表明の場合、それが人の社会的評価を低下させるものであったとしても、以下の要件を満たすことが認められれば、違法性を欠くか、あるいは故意または過失がない(上記最判平16年7月15日)とされ、名誉毀損は成立しません。

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