台湾鉄道との提携が、こんなにも相次ぐ理由 京急、西武が「友好協定」を立て続けに調印

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西武と台鉄の調印式。右が西武の後藤高志社長

相次いで台鉄との提携を発表した両社だが、今後については「3社連携も考えている」(後藤社長)という。京急と西武は株式を相互に持ち合うなど、以前から親密な関係にある。「まだ具体策はない」(同)としながらも、将来的には幅広い連携につながる可能性もある。

それにしても、なぜ台鉄との提携が相次いだのだろうか。実は京急、西武以外にも台鉄と提携を結んでいる鉄道会社はいくつもある。

2012年2月には、JR北海道が「SL冬の湿原号」と台鉄のSLとの間で「姉妹列車協定」を結んでいる。2013年4月には、江ノ島電鉄と台鉄・平渓線が「観光連携協定」を、同年10月にはJR四国・松山駅と台鉄・松山駅が「友好駅協定」を締結した。

2014年11月には、いすみ鉄道と台鉄・集集線が「姉妹鉄道協定」を、翌12月には山陽電車と台鉄・宜蘭線が「姉妹鉄道協定」を結んだ。今年に入ってからも、2月にJR東日本・東京駅と台鉄・新竹駅が「姉妹駅関係」になっている。

誘客への期待と送客への責任

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台北駅で行われた日本のイラストレーターによる似顔絵イベント

それにしても、台鉄が日本の鉄道会社と相次いで連携しているのはなぜなのか。ヒントは、台湾観光協会が昨年実施した「台日同名32駅観光プロモーション」にある。

板橋、日南、大山、平和など、台湾と日本には同じ駅名が32存在する。この駅名と同じ名字または名前の日本人32人を台湾に招待し、駅長体験してもらうという試みだ。

台湾からの訪日客は2014年に前年比27%増の297万人を記録した。この数字は中国や韓国を上回り、国・地域別でトップだが、同年、日本から台湾への旅行者は163万人だった。数としては多いが、台湾の訪日客と比べ134万人も少ない。

「交流人口をウィンウィンの関係にしたい」(台湾観光協会)という言葉のとおり、台湾側としては日本からの旅行者をもっと増やしたいわけだ。国有鉄道である台鉄が立て続けに提携を結んでいる背景には、そうした国策の存在がある。

とすると、一連の提携のポイントは、台湾からの観光客を増やす以上に、どれだけの日本人旅行者を台湾に送り込めるか、という点になってくる。しかし、日本の鉄道業界からは「台鉄との提携で話題性が高められても、日本から台湾への観光客の送り込みで効果が出せていない会社もある」との声も聞こえる。

台鉄のパートナーとなった日本の鉄道各社は、自社路線への誘客効果に期待するだけでなく、台湾への送客という点でも重い責任を担っていることを認識する必要があろう。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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