資本主義が静かに衰退を始めていると言えるワケ 「世界経済の3つの謎」をどう考えばいいのか

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これが一気に変化したのが、19世紀後半である。19世紀前半に多くの必需品に関する発明が行われた。電信、電気、そして電話。蒸気機関は内燃機関となり、内燃機関が動力として使われるようになった。これが欧米の経済を一新した。

では、それまでのぜいたく品生産、ぜいたく品需要と何が違ったのか。これらの技術革新は、交通・通信革命であったのだ。また、それ以前の技術革新とは何が違ったのか。それらの技術革新は時間を節約したのである。人々の時間に余剰をもたらしたのである。

ぜいたく品の生産、資源をぜいたく品に変えること、これはただの変形にすぎない。普通の服がきれいな服、豪華な服に変わるだけである。しかし、交通・通信革命で移動や意思疎通の時間を大幅に短縮することに成功すると、生産のための最大のリソースである時間が余る。これが新たな財の生産に向かい、経済全体の生産量は飛躍的に増加したのである。

一段と時間の節約が進んだ20世紀

さらに、20世紀になると、家事労働革命が起きる。水をくみに行かずに上下水道により家庭に水が届き、廃棄が行われる。洗濯機、掃除機、冷蔵庫により、それまでほとんどの時間を家事に使っていたのが、ほかの仕事ができるようになる。ミシンの普及により裁縫の時間も激減する。

また、農作業の時間が増え、賃金がもらえる仕事ができるようになる。農業にも動力が使われるようになり、生産力が増加する。冷蔵船のさらなる発達により、植民地から食料、とりわけ肉が輸入できるようになる。このように、衣食住の効率が大幅に上昇し、庶民の時間も余るようになる。それが労働投入増となる。よって生産力は急増する。

そして、自動車の普及である。移動時間が減る。馬のための施設、土地、汚物処理が要らなくなる。土地が余り、時間が余り、労働が増える。生産力が急増する。

これで、99%の庶民も含む社会全体の人々の生活水準が上昇し、市場向けの生産のための労働力の投入量が急増したのである。これで経済は急成長を始めた。そして、人口も、マルサスのわなを超えて増加を続けるようになった。これが、19世紀後半からの高成長時代の第1の経済成長である。

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