「トヨタ車」にも入り込むウイグルの強制労働部品 ベンツ、テスラ…業界全体の汚染が調査で発覚

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(写真:yuzu /PIXTA)

世界の自動車産業は原材料や部品などの調達で今なお中国の新疆ウイグル自治区と深い関わりを持っていることが、新たな報告書で明らかになった。今年発効したアメリカの法律では、中国政府が主にイスラム教少数民族に対して人権侵害を行っているとして、新疆からの物品調達は原則禁止とされたが、それにもかかわらず調達が続けられていることになる。

イギリスのシェフィールド・ハラム大学教授で、人権と現代奴隷制を専門とするローラ・マーフィー氏率いる調査チームが発表した報告書には、新疆と深い関係を持つ中国企業と、そうした中国企業から調達した金属部品、バッテリー、ケーブル、ホイールを使用する自動車メーカーとのつながりが詳しく記されている。

1社だけでなく、「業界全体の問題」

報告書では調査チームが確認できる範囲で、中国がウイグル族をはじめとする少数民族の大量拘留を行ってきた新疆で強制労働プログラムに参加したか、同地域から最近、材料や製品を調達した大手中国企業を特定。

報告書によると、これらの中国企業は自動車部品のグローバルサプライチェーンの重要プレーヤーとなっているため、フォルクスワーゲン、ホンダ、フォード・モーター、ゼネラルモーターズ(GM)、メルセデス・ベンツ・グループ、トヨタ自動車、テスラといった自動車メーカーが、どこかのタイミングで新疆を経由した原材料また部品を使った自動車を販売した可能性は濃厚だ。

「私たちが調査した自動車部品で、新疆ウイグル自治区(の問題)に汚染されていないものはなかった」。マーフィー氏は「これは業界全体の問題だ」と話す。

新疆とのつながりは、世界的な自動車ブランドにとって深刻な問題となるおそれがある。バイデン政権はトランプ前政権と同様に、中国の貿易ルール違反や強制労働でつくられた製品の輸入に厳しく対抗する姿勢を強めてきた。国連の推計によると、世界では2800万人が強制労働に従事させられている。

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