なぜYouTuberの私が「銚子電鉄」運転士になったか 自動運転では不可能な「鉄道現場」のリアル

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銚子電鉄の車両を使ったハンドル訓練。運転席に座った著者がマスコンノッチを投入する(写真:交通新聞社)
1872年に日本初の鉄道が開業してから150年。鉄道運転は自動運転、無人運転へと大きく変貌を遂げつつあります。そんな鉄道運転を、鉄道系YouTuber(ユーチューバー)で運転士の経験がある西上いつきさんが解説しているのが『鉄道運転進化論』(交通新聞社新書)です。西上さんは自ら銚子電鉄の運転士にもチャレンジ。『鉄道運転進化論』の一部を抜粋して掲載します。

私は、2022年5月に千葉県銚子市の地域おこし協力隊に就任しました。実際に銚子市に単身赴任し、東京都から住民票を移しています。

地域おこし協力隊の任務は、地元の魅力発信などさまざまですが、私のミッションは「銚子電鉄の活性化」です。鉄道業界での経験を活かして、現場の改善や、SNS等を活用したPRなどを数年にわたって行っていく予定です。

そのなかで、なぜ元運転士の私が再び現役としての活動をすることになったのか。1つには、銚子電鉄が運転士不足である、ということです。運転士1人を養成するには多額の費用と時間を費やす必要がありますが、私であれば、すでに動力車操縦者運転免許を所持していますので、一定の訓練を終えるだけで乗務することができるのです。

「百聞は一見にしかず」

もう1つには、私のミッションである銚子電鉄の活性化、特に現場改善に取り組んでいくためには最前線である鉄道現場をよく知っている必要があるということです。百聞は一見にしかずという言葉のとおり、まずは自分自身が制服を着てみてわかること、運転席から眺めてわかることの多さを私は実体験として知っていますから、運転をすることに何の迷いもありませんでした。

ちなみに銚子電鉄の代表取締役である竹本勝紀社長も、「同じハンドルを握ることで社員と気持ちの共有をはかりたい」という理由から、2016年に動力車操縦者運転免許を取得、自ら乗務に入っています。竹本社長のそのような姿を見ていることも、私にとっては大きな後押しとなりました。

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こうして私が銚子電鉄の運転士になることが決まっていったのですが、不安を抱えているのも事実です。慣れない車両というのもありますし、改めて多くの知識を習得しなければなりません。また、なによりも、運転業務は大きな責任と隣り合わせであるということです。もし事故に巻き込まれたりしたら、という懸念がないといえば嘘になります。しかし、訓練を重ねていけば、不安も払拭できるだろうと思っています。

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