「やる気のない学生とはお茶を飲め」の深い意味 欧州出身の私が学んだ日本における「いい先生」

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それから15年、多くの失敗を経て、私は、異文化チームで結果を出すには、地位的権力と情緒的権力を組み合わせることが最良の解決策であると確信している。

ヨーロッパ出身の女性である私が日本人教授のように振る舞うことはけっしてできないが、日本で働く以上、現地の期待を尊重し、受け入れなければならない。教授としての地位の権力と、学生を指導する女性としての情緒的な権力をうまく組み合わせる必要があることに気が付いたのである。

日本では人間関係の構築が重要

現在でも、卒業前の学生とは飲みに行くことはない。学生と教授の間には、プロフェッショナルな距離が必要だと今でも思っている。しかし、私は学生のために授業内容や人間関係を改善することを決意した。

今では課外活動、企業訪問、事例研究イベント、そしてグループ演習などを学生たちと一緒に行っている。これらのイベントは授業時間内に行われ、教育目標に関連するものであるが、学生と私の間に強い絆を生み出すものでもある。

学生たちは企業を紹介され、インターンシップやアルバイトをすることで、成功するキャリアをスタートさせることができる。地位と情緒的な権力の組み合わせは、教室での専門的な学習環境を提供するだけでなく、卒業後も学生たちと多くの長続きする先輩後輩の関係を築くことができるのである。

パリッサ・ハギリアン 上智大学教授(国際教養学部)

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Parissa Haghirian

オーストリア・グラーツ生まれ。ウィーン大学日本学部卒業。ウィーン経済大学国際ビジネス学部で博士号取得。2004年に来日し、九州産業大学で国際ビジネスを教え始める。2006年、上智大学に准教授として着任。現在は、上智大学国際教養学部教授(国際経営・経済学コース)として、日本の経営学、クロスカルチャー、経営戦略などをテーマに研究・教育活動を続けている。

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