安倍首相、「シングルマザー特区」が必要です! 納税者も納得する新しい支援のかたちとは

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ひとりで子育てをしながら家計も支える。シングルマザーの経済的な困窮が話題になっている。前回記事では生活保護より費用対効果も高い自立支援の取り組みを取り上げた。続く今回記事では、その支援の仕組みを立ち上げたインクル岩手理事長・山屋理恵さんの活動から、シングルマザー特区の必要性について考える。
※前回記事『「シングルマザーの貧困解決」ひとつの道筋』はこちら

JR盛岡駅に隣接した、いわて県民情報交流センター「アイーナ」605号室。2月上旬の土曜午前10時、室内の机の上には、女の子用の新品ランドセルが10個並び、傍らには黒やグレーのビジネススーツが6着、ハンガーに掛けられている。

これらは、NPO「インクルいわて」に寄せられた支援物資の一部だ。この日、シングルマザーを対象に、ランドセルの頒布とスーツの貸し出しが行われた。

ランドセルとスーツを求め、訪れる「ひとり親」たち

寄付で集まったランドセルとスーツ

ランドセルもスーツも、共に寄付で集まったもの。スーツは東京の外資系企業で働く女性たちが送ったもので、百貨店で売っているブランド名が並ぶ。インクルいわての事務所には、寄付されたスーツが段ボール2箱分あり、利用者に合った色とサイズのものを選んで貸し出ししている。今回は9号で黒かグレーという要望に合わせた。

お昼までの2時間に、子どもを連れた女性が入れ替わりで訪れ、ランドセルを見ている。「ここを押すと開くのがいい」とか「この色がいい」と言いながら、選んでいく。インクルいわてのスタッフたちは「あら、○○ちゃん! 大きくなったわね!」とか「○○さん、元気?」と声を掛け、訪れた母親と子どもたちにお茶を出し、笑顔で話している。

寄付品の中でも、いろんなサイズのフォーマルスーツはありがたいです。入学式、卒業式や就職面接の際に使えますから。それから、スーツ姿の時に着るコートも。岩手は寒冷地なので、ダウンなどの防寒着は持っていますが、フォーマルな服装に合うコートは持っていないことが多いです」

こう話すのは、NPO法人「インクルいわて」理事長の山屋理恵さん。笑顔と暖かい言葉で、一瞬にして信頼を獲得する。「インクル」は「インクルージョン」の略で、家族の形にかかわらず、誰もが生き生きと暮らせる包摂された社会(inclusive society)を意味する。シングルマザーだけでなく、ひとり親支援全般を手掛ける。

インクルいわては、東日本大震災の後に作られた、若いNPOだ。それ以前は岩手県内にひとり親支援の団体はひとつしかなかった。それは、第二次世界大戦で夫を亡くした戦争未亡人支援のために設立された、一般社団法人・岩手県母子寡婦福祉連合会である。

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