イケアは、なぜ多くの人を惹きつけるのか 大塚家具と対照的な家具店の3つの成功要因

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さらに、1円でも(0.1ユーロでも)無駄遣いしないとする精神が生きる同社は、やはり創業者の影響が大きい。カンプラード氏は、世界屈指の資産家になったあとも節約を忘れず、たとえば飛行機は必ずエコノミークラスを使った。メディア向けの会見場に地下鉄を使って移動し、さらには「高齢者割引」を使ったこともあるという。節約が全社員に徹底されており(これ自体はすばらしいことだ)、イケア社員はどんな役職であっても飛行機はエコノミークラスを使って移動するようだ。

成功の理由②:外資でありながら日本国内を向いたマーケティング

商品企画時に、競合他社と比して訴求力のある価格を決定する。その価格にミートする機能やデザイン、品質を作り込んでいく。今なら「非原価主義」と呼ばれる考え方を、イケアはかねてより実践していた。補足しておくと、これに対して「原価主義」なる方針がある。厳密ではないものの、原価主義とは発生する原価に利益を加算し売価を決定するもの。非原価主義は、売価と利幅を決定したのちに、その原価に見合う仕様を考えるものだ。

イケアには純粋な日本向けの商品はなく、世界統一ラインナップの中から日本にマッチした商品を展示する。そのため、どれを日本で売り出すかのリサーチは徹底している。日本進出に際しては、相当な数の住宅事情を調査。各国の生活にあわせた提案のため、進出時だけではなく、定期的にお客の自宅に訪問するほどだ。またイケアグループのミケル・オルソンCEOも来日時に、日本の住宅を訪問している。

目をつけたのはリビングよりもベッドルーム

ベッドルームのショースペース(写真は2007年時)

イケアはリビングよりもベッドルームに商機があると発見した。一家団欒から、生活は個に移っていく。自宅の個室やあるいはベッドルームで長時間過ごす人も多い。すると、それまで「寝る場所」だったベッドルームは、「英気を養い」「楽しみ」「くつろぐ」場所に変わっていく。イケアはベッドルームに小家具を配置するだけで、あるいはカーテンを変えるだけで、違った日常が楽しめることを提案した。

新商品開発も猛烈な勢いで進めている。イケアの店舗には約1万点の商品が置いているが、その入れ替わりも含めて1年に約1500点もの新商品を開発するという。店舗には「ルームセット」や商品比較のための「メディア」などの展示場にわけ、それぞれでくまなく商品を陳列していく。

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