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冷戦志向に執着する右派政治家を打破できるか 岸田首相が真の自由民主主義を取り戻す道

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結果的に安倍政治の踏襲となった「国葬の強行」。岸田首相は真の自由民主主義を取り戻せるのか。

閣議前に着衣を整える岸田首相
首相官邸で繰り上げ閣議に臨む岸田文雄首相(9月26日)(毎日新聞社/アフロ)

岸田文雄首相にとって、安倍晋三元首相の国葬がここまで国民の反発を招き、政権支持率の急落につながったのは想定外だっただろう。しかし、不評の原因は首相自身にある。安倍時代にはごまかせた政治手法や政治体質の問題点を首相が安易に継承したことが政治混迷の最大の原因だ。

第1の問題は、国民や国会との対話の拒絶である。首相は丁寧な説明という言葉を繰り返すが、国会での議論は9月8日の閉会中審査のみであった。その中で首相は、国葬は民主主義を守る決意を示すために行うと述べた。しかし、国会での議論や承認なしに、内閣単独で国全体として弔意と敬意を示す国葬の実施を決めたことが民主主義に矛盾するのではないか、という疑問には答えなかった。安倍元首相のような国会軽視を、国民はもはや許さないだろう。

第2の問題は、自民党の冷戦依存体質だ。これは、自民党と旧統一教会の不明瞭な癒着関係とも密接に関連する。自民党は冷戦構造の中で、日本を西側陣営につなぎ留めるためのピンとして長期政権を維持した。1990年代前半には冷戦が終焉し、自民党は存在意義を失ったかに見えたが、90年代の危機を辛くもしのいだ。

右派政治家による時代錯誤な共産主義

その秘訣の1つは、90年代後半から台頭した右派政治家が、かつて現存した冷戦とは別物の疑似的冷戦構造をつくり出し、自らの存在意義をアピールしたことである。右派政治家が取り組んだのが、女性の権利や家族に関する個人主義などの文化争点をめぐる「共産主義」思想の脅威と称するものだった。選択的夫婦別姓制度、ジェンダーフリー教育、さらには子育ての社会化など、男女の固定化された役割分担や従属関係を見直す運動は、日本の伝統的美風を破壊する共産主義的陰謀だというわけだ。

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