日立は、こうしてインド事業を2倍に増やす インドに根づいた活動を展開

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ましてや、現代のインドでの技術やビジネスの進歩について、日本は、インドを理解しているとは言えません。多くのアメリカの企業や組織のリーダーをインド人が務めており、その数が増えているように見えます。なぜでしょうか。

インドと日本の相互理解は不十分です。日本がインドを理解するには、インドを「体感」する必要があります。インドと日本が協力するには、もっともっと色々な経験が必要です。

とくに、日本の若者に期待しています。より良い日本の未来のために、もっと日本以外の国を体感する必要があると思います。そして、日本で既にできたものをそのまま海外にコピーしようとするのではなく、インドなど、海外で、真に求められるソリューションが何なのか、考え、実現していく必要があります。

日本人にとってインドで働くことは決して簡単ではありません。現地での当惑や混乱は日常茶飯事です。商習慣や労働文化の違いを経験する事も多くあります。そのような違いを理解し、対応していく必要があると思います。それにより、日本が、さらに、世界に寄与できるようになる事を期待しています。

業界の活動には積極的に参加していく

――NASSCOM(インドの全国ソフトウェア・サービス企業協会)のJapan Council(日本協力委員会)で副会長をしたり、インドの大学でお話をしたり、と社外の活動にも積極的ですね。

NASSCOMのJapan Councilの副会長としてIT分野における日印間の相互理解の促進に取り組んでいます。私たちは、多国籍企業のインド拠点や、インド企業を訪問し、成功事例を学習させて頂いております。そして、日本やインドの政府など、各方面のリーダーの方々に、Japan Councilの理解を共有頂いたり、各種ご提案をしています。そのような活動が、将来の日印の協力やビジネスの成功につながる事を期待しています。

また、インドの大学では、外国人の眼から見たインドの素晴らしさ、日印の協力の成功例、今後のさらなる協力への提案などをさせて頂いています。そして、先生や学生の方々との会話から、多くの事を学んで来ました。例えば、インドの大学生から、「なぜ、インドは世界から遅れているのか」という質問を受けた事があります。インドのIT産業が世界で認められている事を考えると不思議な質問ですが、同時に、インドを理解する為には、有効な質問です。このような質疑から、インドを学んで来ました。

――日本にはいつ帰国したいですか。

13年後ですかね(笑)。インドへ来て3年ですが、まだまだインドで仕事をしたいです。例えば、インドにとって壮大で長期的な目標でもあるスマートシティ群の建設に寄与していきたいです。インドで働くのは楽しいです。ビジネスに留まらず、クリケット、カレー、ボリウッド映画等も、楽しんでいます。

とにもかくにも、インドは、大きな国です。世界で二番目に多い約12.7億という数の人たちが、日本の約10倍の広さの土地に住んでいます。その人々の生活を支えるための社会インフラの整備が必要です。インドで、インドの為の社会基盤へのソリューションを開発、提供する事は、世界の中でも、重要な仕事だと思っています。さらに、インドは、世界で必要とされる社会イノベーション事業への有効な窓口でもあります。

私は「インドで、インドと、インドの為に、そして世界の為に」という考えを強く意識しています。インドでの社会イノベーション事業は、これから世界で必要とされるソリューションを先取りすることに等しいと考えています。

帝羽 ニルマラ 純子 インドビジネスアドバイザー

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ていわ にるまら じゅんこ

インド共和国・バンガロール生まれ。法政大学大学院修了。来日以来14年間で、日印コンサルタント会社起業を経て、現在インドビジネスアドバイザーとグローバル人材トレーナーとして活躍。著書には、2013年にインドの諺について日本語で解説した『勇気をくれる、インドのことわざ』がある。インドの諺を日本語で紹介する本の発行は、長い日印の歴史でもこれが初。2014年には『日本人が理解できない混沌(カオス)の国 インド1―玉ねぎの価格で政権安定度がわかる!』 『日本人が理解できない混沌の国インド2―政権交代で9億人の巨大中間層が生まれる』発行。

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