「生理用品の無償化」背景にある2つの大きな問題 スコットランドの画期的新法が目指している事

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生理、および、生理用品についての汚名を消すことが、スコットランドの生理用品法の大きな柱の1つだ。手に取りやすい形で生理用品が提供されるようにする。「誰かに頼んで提供してもらう」「なぜ必要なのかを説明する」「どれぐらい必要かを説明する」状況にならないようにする。

また、「女性」のみに生理用品が無償で提供されるのではなく、トランスジェンダーあるいはジェンダーニュートラルな人も含め、「生理があるすべての人」に提供する。

娘を持つ母親の反応

イングランド南部サウサンプトンに住む筆者の女性の友人シベルさんに、生理用品の無償提供をどう思うか聞いてみた。先述したように、イングランドでは教育機関を通じて無料の生理用品が提供されている。

シベルさんには、地元の公立小学校に通う現在8歳の娘がいる。国民医療サービス(NHS)の調べによると、イギリスに住む女児に生理が始まるのは平均11歳だが、子どもによっては5歳から始まる場合もある。

シベルさんの娘にはまだ生理は来ていないが、性教育はすでに始まっており、生理についても赤ん坊が生まれる経緯についても学校で学んでいるという。

「まだ早い」と思うため、娘には生理用品を持たせていない。「でも、不意に生理が来ることもあると思う。学校に備品があって、無料で利用できるのは非常に助かるし、親として安心できる」。

スコットランドの先駆的動きには、ちょっとした批判も出た。無償提供を推進するための大使に抜擢されたのが、男性なのだ。「男性のほうがより広い層の人々に無償提供の利点を強くアピールできる」という説明がされた。はたしてそうだろうか。

いずれにしても、イギリス全体でそして世界中で同様の動きが広がってくれることが期待されている。

小林 恭子 在英ジャーナリスト

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こばやし・ぎんこ / Ginko Kobayashi

成城大学文芸学部芸術学科(映画専攻)を卒業後、アメリカの投資銀行ファースト・ボストン(現クレディ・スイス)勤務を経て、読売新聞の英字日刊紙デイリー・ヨミウリ紙(現ジャパン・ニューズ紙)の記者となる。2002年、渡英。英国のメディアをジャーナリズムの観点からウォッチングするブログ「英国メディア・ウオッチ」を運営しながら、業界紙、雑誌などにメディア記事を執筆。著書に『英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱』。

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