ギリシャ総選挙で急進左派連合(SYRIZA)を中心とする新政府が誕生した。これに対する金融市場の反応は予想できた。問題は、この比較的落ち着いた状態がいつまで続くかだ。
ギリシャ新政府は強気だが、財政緊縮をやや後退させるのと引き換えに、前政府の構造改革プログラムを持続させること以外に選択肢はほとんどない、との見方が強い。が、SYRIZAの勝利の政治的、社会的、経済的な影響は重要であり、無視することはできない。実際、ギリシャのユーロ圏離脱を完全には否定できないし、ギリシャ内のユーロの価値を同国以外で実質的に下げるような資本規制を行う可能性についてはいうまでもない。
ギリシャ危機が始まった2010年以降、金融政策や制度上では一定の前進があった。不完全だが新たな銀行同盟や、「必要であれば、どんなことでも」してユーロを救うという欧州中央銀行(ECB)の表明は、欧州通貨統合の維持に必要不可欠だ。もう1つの進展は欧州安定メカニズム(ESM)の設立で、国際通貨基金(IMF)のように多額の金融支援を条件付きで実施できるようになった。
ドイツの頑固さを過小評価?
それでも、ギリシャが不安定なことで世界的な金融リスクが大きいことに変わりはない。強気のギリシャ新首脳陣が、債務救済あるいは構造改革包括案の再交渉に対するドイツの頑固さを過小評価していることは想像にかたくない。さらに、欧州官僚がギリシャの政治力学を見誤っていることも、ほぼ明白だろう。
危機が発生した後、ギリシャは新たな民間融資を受ける道を断たれ、いわゆる「トロイカ」(IMF、ECB、欧州委員会の3者)が多額の補助金付き長期融資に踏み切った。が、たとえギリシャの債務が完全に帳消しになったとしても、国内総生産(GDP)の10%に相当する、基礎的財政収支の赤字(債務に対する利払いを除き、政府による財・サービスへの支出が収入を上回っている額)から、財政均衡へ持っていくには厳しい財政引き締めが必要であり、景気後退は必至だ。過去の政府の行き過ぎた政策でギリシャの消費は維持可能な水準を大きく超えた。落ち込みは不可避だった。
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