「インテリジェンス重視」で安倍政権は強くなった 前国家安全保障局長・北村滋氏が語る安倍外交

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安倍外交を支えた前国家安全保障局長が明かす「インテリジェンス戦略」の深層

野田政権以来、歴代最長の7年8カ月にわたり内閣情報官を務めた北村滋氏(撮影:今井康一)

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内閣情報官、そして国家安全保障局長を歴任し、インテリジェンス(機密情報)の最高責任者として安倍晋三元首相を支えた北村滋氏。ロシアのプーチン大統領と単独会見するなど、自身も外交上のキーパーソンだった人物を直撃した。

――第1次安倍政権から一貫して進めた、日米同盟強化への評価は。

第2次安倍政権以降では、3つの面で大きな進歩があった。

第1に安全保障の基盤となる情報だ。人体でいえば「神経」に当たる。2013年に成立した特定秘密保護法によって、安全保障に関する情報漏洩に懲役10年以下の罰則が導入された。情報保全の制度がアメリカ並みになったことで、同盟国のアメリカ、それから同志国との情報のやり取りが、質・量ともに格段に改善された。

第2に、防衛運用面の向上だ。これは人体なら「骨格と筋肉」だ。2014年に日本が集団的自衛権を行使できるよう憲法解釈を変更したことで、米軍と自衛隊の相互運用性は格段に向上した。安倍元首相には、日本はアメリカの同盟国にふさわしい安全保障上の責任を全うすべきであるという考えが強かった。同盟国であるアメリカが攻撃されているときに拱手傍観しているわけにはいかないということだ。

こうした取り組みはいずれも内閣支持率を10ポイント近く下げた。言ってみれば政治的体力を著しく消耗しながら、安倍元首相は強い意志でこれをやり遂げた。

2013年12月には国家安全保障会議を設置。その事務局として2014年1月に内閣官房に国家安全保障局が設けられて以降は、首相官邸が安全保障の司令塔となった。

第3に、人体では「内臓」に当たる経済安全保障面の取り組みの開始だ。2020年4月に国家安全保障局に「経済班」が設置され、経済安全保障政策を担う実働部隊ができた。

すべてをつなげて考えていた

――その3つすべてを安倍元首相はつなげて考えていたと。

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