安倍元首相の側近が明かす「エネルギー外交」 資源を持たざる国の現実を踏まえて苦闘した

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今井尚哉氏は首席秘書官、首相補佐官として安倍政権を支えた。自身は経産官僚でありながら、外交や財政政策でも手腕を振るい、安倍晋三元首相から絶大な信頼を得た。

今井尚哉氏は「2006年の第一次安倍政権時から安倍元首相のエネルギー・環境政策における基本認識はできあがってきた」と振り返った(撮影:尾形文繁)

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世界情勢が混迷を深める中で、安倍政権の経験をどう生かしていくべきか。今井尚哉氏にエネルギー・環境政策を中心に聞いた。

 

――ロシアによるウクライナ侵攻をきっかけに、エネルギー安全保障への関心が急に高まっています。安倍政権のエネルギー外交の基本方針は何だったのでしょうか。

一言で言えば「地球儀俯瞰外交」。日本は資源を持たない国だから、全方位外交が必要だということだ。地球温暖化対策なども、その認識を踏まえた内容だった。

2006年の第一次安倍政権時から安倍元首相のエネルギー・環境政策における基本認識はできあがってきた。翌2007年のG8ハイリゲンダムサミットは安倍元首相の外交デビュー戦だったが、そこで安倍元首相は「クールアース50」という、2050年に温室効果ガス半減という長期目標の設定を提唱した。

先進国のみならず産油国や開発途上国も含むすべての国が参加し、京都議定書を超える地球温暖化対策の枠組みを作ろうという提案は、現在につながる画期的なものだった。

すべての国が関与することが重要

――先進国だけでの取り組みではいけないということですね。

地球温暖化に歯止めをかけるには、すべての国が脱炭素化に取り組む必要がある。現在、世界はエネルギー資源の大半を化石燃料に依存しており、その多くが中東など地政学的リスクの大きい地域に偏在している。資源を持たないわが国はエネルギーの確保には常に万全を期す必要があり、温暖化対策についても産油・産ガス国と一緒になって取り組まなければならない。

他方、石炭はアジアを含め世界中に幅広く存在している。これから発展を遂げようとするアジア諸国に、今後、石炭を使うなというのは先進国のエゴだ。日本はそうした極端な考えに肩入れせず、アジアに合った形での脱炭素社会を目指していかなければならない。

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