マクドナルドを悩ます、FC離反懸念 業績改善の新たな課題に

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 2月10日、日本マクドナルドホールディングスの経営悪化が深まる中、各店舗を支えているフランチャイジーへの悪影響が目立ってきた。昨年12月撮影(2015年 ロイター/Issei Kato)

[東京 10日 ロイター] - 日本マクドナルドホールディングス<2702.T>の経営悪化が深まる中、各店舗を支えているフランチャイジー(FC)への悪影響が目立ってきた。

昨年7月の中国鶏肉問題や異物混入事件以降、既存店売上高は前年比で2ケタ減少を続けており、今後、FCの離反やロイヤルティー収入のさらなる落ち込みを招く可能性がある。同社経営の効率化と店舗展開の原動力となってきたFCへの対応が、同社の経営再建の新たな課題になりつつある。

労組が緊急のFC支援策を要請 

日本マクドナルドの労働組合である日本マクドナルドユニオンは先月30日、ホームページ上で、本社への質問状を公開した。ここでは、「フランチャイジー、特に中小規模のフランチャイジーについては、昨今の売上減少をみても、継続企業の前提に重要な疑義が生ずることは容易に推察される」と懸念を示したうえで、フランチャイジーへの本社の経営支援の具体策を求めている。

同社が全国に持つ3093店舗(昨年12月末現在)のうち、FCは2084店舗で67%を占める。前社長の原田泳幸氏が経営効率化の重点施策として全国各地で直営店のFC化を進めた。70%の水準達成をめざし、08年には約500店舗が直営店からFCになった。それだけに、収益の歯車が逆回転しつつある現在、FCにも相応の負担がかかる。昨年1年間で同社の店舗は111カ所が閉店、FCの撤退は69店舗に及んだ。

消費者の健康志向の高まりに加え、同社では、上海福喜食品の期限切れ鶏肉問題、米港湾労使紛争のあおりを受けたマックフライポテト不足、異物混入事件など立て続けに問題が起きた。鶏肉問題が摘発された昨年7月以降は既存店売上高は2ケタのマイナスが続いており、今月5日に発表された1月の実績は38.6%減という衝撃的な落ち込みとなった。昨年2月以降、売上高の減少は1年間も続いている。

こうした一連の外的な要因以外にも、急速に進めたFC化自体に問題があったとの指摘もある。マクドナルドでアルバイト・社員を通じて23年間勤務、神奈川県の最大店舗での店長などを経験した青木尚士氏(会社経営)は「近年の業績低迷はFC化が一番の原因」と話す。本社社員がFCへの転籍を促され、それへの不満から離職者が増えるなど、結果的に社員の士気を低下させる事態につながったという。

「業績低迷は多くのFCオーナーに責任がなく、FCオーナーへの支援が大切になる。本部の決定を伝えるだけではなく、(FC側が)納得できる対応策が必要」と、野村証券エクイティ・リサーチ部の繁村京一郎氏は話す。バリュー重視の価格政策や店舗改装など、決算発表時に打ち出した一連の客数回復策が効くまでに時間が掛かればかかるほど、店舗を経営するFCの厳しさは増す。相次ぐ廃業や閉店は、FCからのロイヤルティー支払いにも影響し、同社の経営の根本を揺るがすことになる。

サラ・カサノバ社長兼CEOは今月5日、異物混入問題が明らかになって以降初めて臨んだ記者会見で「マクドナルドのビジネスは、FCの成功なくしては成功できない」と述べ、積極的にコミュニケーションをとる考えを示した。自らが2015年中に47都道府県の店舗を訪問することも打ち出したが、「それは就任してすぐにやるべきこと」(外食業界関係者)との指摘もあり、こうした施策で、FCと本部との風通しが良くなるかどうかは未知数だ。

上海福喜問題時には、FCに対する財務施策として30億円を実施した。マクドナルド関係者は「今年も何らかの形でFCには投資をしていく」とするが、具体策や規模は明らかになっていない。   

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