マクドナルドを悩ます、FC離反懸念 業績改善の新たな課題に

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いちよし経済研究所アナリストの鮫島誠一郎氏は、業績回復が見えてくるには時間がかかるとしながらも、「FCによる店舗売却があっても、良い店舗ならば、本部が買い取り、直営化することもあるだろう」とみており、一気に店舗減少に見舞われる懸念は小さいとする。    

同社の立て直し策として、大株主である米マクドナルドからの支援に期待する向きもある。しかし、日本マクドナルドは浮動株が少なく、一連の問題が適正に株価に反映されているとは言い難い。足元では、鶏肉問題が発生する前の昨年6月に付けた高値2965円から15%程度下げた2500円が意識されている。2013年終値2687円比でみれば、その後の業績悪化にもかかわらず、株価はわずかに水準を下げたに過ぎない。   

野村証券の繁村氏は「バリュエーションが高すぎる。米本社が株式を買い増すことは考えにくい」と話す。業績悪化中の企業に対して割高過ぎる投資を行えば、株主代表訴訟の対象にもなりかねない。   

米マクドナルド自体も、14年は世界の既存店売上高が12年ぶりにマイナスに陥るなど、苦境に立たされている。先進国を中心に健康志向が強まっており、マクドナルドを取り巻く環境は厳しい。ドン・トンプソン最高経営責任者は「15年前半も厳しい状況は続く」と述べている。これを受けて、ドン・トンプソン最高経営責任者(CEO)が2月末に退任、チーフブランドオフィサーのスティーブ・イースターブルック氏が新CEOに就任することを発表した。   

信頼回復に長い道のり 

日本マクドナルドではいま、想定外の売上げ減が現場の人員減へ、そしてサービス低下につながるという「悪循環」が生じており、カサノバ社長が今月5日に掲げた「お客様と心でつながるモダンバーガーレストラン」というビジョンが空虚に響く。異物混入問題では安心・安全に疑問符が付き、同社長が就任時に強調した「ファミリー層獲得」には、強い逆風となっている。

同社は15年12月期の業績見通しについて「合理的な算定ができない」として「未定」とした。野村証券では「信頼回復は一朝一夕にできるものではなく、15年12月期も営業損失・当期純損失が続く」と、厳しい見方をしている。     

 

(清水律子 編集:北松克朗)

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