伝授!これが「自前広告コピー」の作り方だ 小霜和也、本田哲也が語る広告の今(上)

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こういうお話をすると、それは大企業だからできるんでしょ?と言われがちですが、予算も規模も小さいスモールビジネスでも自前で取り組める手法があると思っています。

小霜さんの整骨院のお話をPRという視点で考えるなら、たとえば最近話題の「スーパーシニア」と結びつけてはいかがでしょう。アクティブシニアはよく耳にすると思いますが、スーパーはその上です。サッカーもゴルフもガンガンこなします。実際、シニア層の運動能力は年々あがっていますし、この話題は非常に喜ばしいことです。赤ちゃんの睡眠や美魔女の話と同様、世の中の関心度も非常に高いと思いますよ。

PRのテクニックや、テレビ局のプロデューサーと顔見知りとか、それも大事なことではあるのですが、それよりも自分の商品が世間一般とどう関わるのかを考えられることこそが大事で、そこに企業の規模は関係ないのです。

PRを成功させる3つのキーワード

成功するPRのキーワードは、「おおやけ」「ばったり」「おすみつき」の3つです。飲み会で自分の話ばかりするのがNGなのは誰もがわかることですが、こと商品になると空気を読まずに言いたいことばかりを伝えようとしてしまうことがあります。そうではなくみんなに共通する公共の話題「おおやけ」の話を加えましょうということです。

本田哲也 (ほんだ てつや)●1970年生まれ。セガの海外事業部を経て、1999年フライシュマン・ヒラード日本法人に入社。2006年、グループ内起業でブルーカレント・ジャパンを設立し代表に就任。2009年に『新版 戦略PR』(アスキー新書)を上梓し、広告業界にPRブームを巻き起こす。近著に『最新 戦略PR 実践編』(KADOKAWA/アスキー・メディアワークス)がある。

「ばったり」とは偶然戦略です。よく言われるのが1日3回同じ情報にばったり出会うと人は急に信じ始めるというもの。朝の情報番組でヨーグルトの話を聞き、ランチの席で同僚が同じ話をはじめ、夜にネットサーフィンしているとお気に入りのブロガーの同じ発言を目にする、ということです。朝昼晩と同じ情報に出会う状況が作れると、自分に関係がある情報なんだと思ってもらえます。

「おすみつき」は、マスコミや専門家など、自分以外の第三者のお墨付きをもらうということです。

PRとは商品の良さを今一度しっかり突き詰めることと、世間の関心が何なのか把握すること。これを「同時にすること」に意味があります。どちらを先にやってもダメですし、それなくして「新聞社に売り込みに行こう!」なんてあり得ない。そういう作業をして初めて、この専門家が味方になってくれるなとか、あのモデルさんが興味あるって言ってたな、などのアイデアや戦略が浮かぶのです。

誰を巻き込みどんなメディアを使い、どうやって情報を増幅させるかの設計図を描く所までがプランニングです。次にプランニングに伴った調査をし、コンテンツを作り、メディアや口コミを介して世に広めていく。そして最後に効果測定をする。これがPRのPDCAですね。

小霜さんがおっしゃった「生活者と商品・サービスの新しい関係をクリエイトする」こと。PRはそれに加えて「世間との関連をどう定義し、戦略を練るかと」いう話になります。自前PRにおいても、ここをもう一度考えてみることが大切かなと思います。

後編は2月12日に公開します。お楽しみに!

両角 晴香 フリーライター

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もろずみ はるか / Haruka Morozumi

福岡県生まれ。広告制作会社を経て2010年にフリーライターに転身。中学1年生の時にIgA腎症を発症。18年3月、夫の腎臓を移植する手術を受けた。現在、夕刊フジなどで執筆。

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