岸田政権の資産所得倍増計画に絶対に必要なもの 「つみたてNISA枠」を増やすだけでは不十分だ!

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例えば、つみたてNISAの適格商品として金融庁が選んだ運用商品は、「分散投資が十分でかつ運用管理費用が大きすぎない」といった条件を満たすものだ。それゆえ、つみたてNISAの適格商品と国債と銀行預金はアドバイスの対象としてよい、といったごく限定的な範囲内で、一部が「投資顧問的」な行為を認めるごく簡単な国家資格があるといいと思う。

こうした仕組みがないと、マネーリテラシーは広く定着して実践の役に立つ知識になりにくい。

筆者の思うに、この種の免許の取得条件を難しくする必要はない。数時間の研修を受けて簡単なテストに合格するとOKといった、普通自動車の運転免許の学科試験と同等並みの簡単に取れるものでいいと思う。多くの国民が交通ルールを知っているのは、運転免許制度のおかげだ。マネーリテラシーも交通ルール程度に普及して欲しい。

免許更新には研修必須、利益相反の排除を

その代わり、2年に1度の免許更新の際には、2コマくらいの研修を受けてもらうことを必須にしたい。そして、金融機関や保険会社との利益相反が生じるようなビジネスを徹底的に厳しく排除したい。

金融機関に所属するお金のアドバイザーや金融機関と深い利害関係を持つ資格認定団体などは、この資格には絶対にかかわらせないほうがいい。あくまでも金融機関との利害関係から独立なアドバイザー個人を認証して支援するべきだ。

いわゆるFP(ファイナンシャルプランナー)とは活動の方向性が異なる。FPは広い範囲のお金の知識を問われるが、金融補助員にはそこまでの範囲の知識は必要ない。

他方、FPは金融機関に勤めていたり、相談業務と共に生命保険を顧客に紹介して保険会社から報酬を得ていたりする場合があるなど、金融補助員の仕事に関わる上では深刻な利益相反を持つ場合がある。FP資格の認定にかかわる、FP協会や金融財政事情研究会などは、金融機関との間に小さからぬビジネス関係があるので、本案件にはかかわるべきではない。

個人がFP資格と金融補助員の資格の両方を持って活動することを妨げなくてもいいが、投資信託や生命保険などの商品販売から利益を得ていないことは新しい資格の要件として重要だ。近年、金融庁が強調してきたフィデューシャリー・デューティー(顧客本位の業務運営)の精神を根付かせるうえでも大事なポイントだ。たとえば筆者は、証券会社の社員でもあるので金融補助員の仕事はできない。筆者自身にとってこの制度の活用は、リタイア後の楽しみとなる。

こうした簡単な資格があれば、自分の知識のためにその取得を目指して勉強しようとする人が出てくるだろうし、他人への金融的な手伝いをビジネスにする人が出てくるだろう。後者が活躍することで、金融機関の不適切なセールスなどの被害を減らすことができる。また、資格の更新の際に、簡単な講習の受講を義務づけることで、国民に最新の金融知識を普及することができる。

金融補助員的な仕事は、大いに儲かる仕事ではなかろうが、人助けになるし、「副業」や「老後の仕事」にもいい。金融機関との利害が絡まないクリーンなものである必要があるが、ビジネス的なインセンティブを持たせながらマネーリテラシーの普及を図ることが有効なのではないか。

以上が資産所得倍増の実現に関する筆者の提言だ。「聞く力」が売り物の某氏のスタッフのどなたかが、某氏の耳元でささやいてくれると嬉しい(本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承ください)。

次ページさて競馬コーナー。夏の福島開催3歳重賞の勝者は?
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