ニューヨーク銃規制への「違憲判断」で広がる恐怖 乱射加速?アメリカの銃規制はさらに緩むか

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州当局者が最高裁に対して行った証言によると、この2人の男性、ロバート・ナッシュ氏とブランドン・コッチ氏は、人口密集地域から離れた場所で射撃訓練や狩りをする目的で銃を所持することが許可されており、コッチ氏は通勤時の銃の携帯も許可されていた。

トーマス判事は、市民は憲法上の権利を行使しようとする理由を政府に説明するよう求められてはいない、と判決に記している。「個人が政府当局者に特別な必要性を示さなければ行使できない憲法上の権利を、私たちはほかに知らない」とトーマス判事は書き、次のように付け加えた。

「評判の悪い言論や自由な宗教行為に関し、憲法修正第1条はそのように機能しない。被告が自分に不利な証人に対抗する権利に関し、憲法修正第6条はそのように機能しない。そして、自衛のため公共の場で(武器を)携帯することに関し、憲法修正第2条はそのように機能しない」

詰めの甘い判決内容、銃乱射は毎日発生

トーマス判事は、各州には慎重を要する場所で銃を禁止する自由は残されているとし、その例として、学校、政府の建物、立法議会、投票所、裁判所などを挙げた。ただ、「『慎重を要する場所』の範囲を、法の執行から隔離されていない公共の集合場所すべてに単純に拡大したのでは、『慎重を要する場所』という定義を広げすぎることになる」と警告した。

スティーブン・ブライヤー判事は反対意見の中で、こうした多数派の指針は不十分であり、判決の範囲が不明確だと述べている。「地下鉄、ナイトクラブ、映画館、スポーツスタジアムはどうなのか? 裁判所は言及していない」.

ソニア・ソトマヨール判事、エレナ・ケーガン判事とともに提出されたブライヤー判事の反対意見は、銃暴力による死者数に焦点を当て、次のように指摘した。

「2020年には4万5222人のアメリカ人が銃で殺された。今年に入ってからは277件の銃乱射事件が報告されている。平均して毎日1件を超える件数だ。銃暴力は今や自動車事故を抜いて、子どもや青少年の死因の第1位となっている」

(執筆:Adam Liptak記者)
(C)2022 The New York Times

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