欧州で広がる「3つの不安」とEU域内で深まる亀裂 物価高下の景気後退、深まる亀裂、南欧債務問題

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欧州は今回、経済、政策、政治の3つの環境において同時に逆風に見舞われている。

国内の圧倒的な支持を背景に、対ロシア禁輸問題で妥協を引き出したハンガリーのオルバン首相(写真:Bloomberg)

新型コロナウイルスの感染拡大による経済、政策、政治の混乱をどうにか乗り切った欧州に、新たな不安が広がっている。

経済面では、景気後退と物価高騰が同時進行するスタグフレーションのリスクが日増しに高まっている。EU(欧州連合)の政策面では、ウクライナ侵攻に伴う対ロシア制裁をめぐってEU内の亀裂が表面化している。また、このところ影を潜めていた南欧の政治リスクに再燃の兆しがある。

欧州を襲う3つの不安要素を解説する。

コア物価も上昇が加速

数年前までは「低成長・低インフレ」が常態化し、日本型の真性デフレ入りが不安視された欧州経済だが、今や猛烈なインフレが襲っている。ユーロ圏の5月の消費者物価の速報値は前年比プラス8.1%と、統計開始以来の過去最高を更新した。

物価高騰の始まりは、ロシアによるウクライナ侵攻後に一段と加速したエネルギーや食料品価格の上昇だが、その影響は資源関連以外の幅広い費目に広がっている。変動の大きいエネルギー・食料・たばこ・アルコール飲料を除いたコア物価も、5月の速報値では、欧州中央銀行(ECB)が中期的な物価安定と定義する2%を上回る前年比プラス3.8%まで上昇率が高まった。

原材料価格の高騰を受け、企業が価格転嫁の動きを強めているほか、5月上旬までの急激なユーロ安による輸入物価の押し上げや、世界的な供給網の混乱継続、経済活動再開による財・労働市場での需給逼迫も物価の押し上げ要因となっている。

次ページ忍び寄るスタグフレーションの影
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