3メガのアジア競争、個人取引で三菱先陣 アジア戦略を加速させるが、3行に温度差

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三菱東京UFJ銀行バンコク支店は買収したアユタヤ銀行と1月5日に統合した

国内収益ジリ貧のメガバンクが、アジアでの攻勢を強めている。

1月5日、三菱東京UFJ銀行(BTMU)はタイのバンコク支店を、同国5番手のアユタヤ銀行と統合した。BTMUは2013年末、アユタヤ株の72%を約5360億円で取得。一つの金融グループが保有できる預金受け入れ機関は一つというタイの規制もあり、今回の統合に至った。

統合で、BTMUバンコク支店で取引をしていた日系企業約4000社は、アユタヤの600以上の支店の利用が可能に。また、「アユタヤの3万社以上の取引先と、日系企業とのマッチングも本格化する」(BTMUの大澤正和アユタヤプロジェクト推進室長)。たとえばタイの日系輸送機メーカーのインドへの進出案件。BTMUバンコク支店では取引のなかった部品メーカーをアユタヤで取引があったため紹介でき、インドへ共に進出する契約ができた。

さらにBTMUがもくろむのは、個人取引の拡充だ。日本の銀行で、アジアの個人取引に踏み込めているところはない。だが、アユタヤの貸出残高のほぼ半分は個人向け。市場シェアは個人ローンで3割、クレジットカードローンで2割あり、いずれもタイ国内首位を誇る。「(BTMUは)過去約50年間、タイで個人向け取引を提案できたことは一度もなかったが、今回初めてできるようになる」と大澤室長は意気込む。

初めて個人取引を提案

すでに複数の日系企業から給与振込口座をアユタヤにするという約束を得ており、その従業員数は合計で約2万に及ぶ。彼らとの新しい個人取引が加われば、アユタヤの成長は加速する。

とはいえ焦りは禁物だ。タイ国民にしてみれば日本の金融機関は外資系。日系銀行色を強く出しすぎると反感を買いかねない。アユタヤの看板には、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)の赤いマークも入るが、あくまでもさりげない(写真)。

タイは14年5月にクーデターがあり、実質GDP成長率が14年1~3月期にマイナスになるなど、決して安定している国ではない。カントリーリスクとも向き合いながら長期戦で成果を狙っていく。

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