創造的であれば、常にフロンティアはある レイ・カーツワイル氏が語る未来社会

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「仕事は自動化されるが、技術を要求する新たな仕事を生み出すだろう」――それが私の見解です。まだ発明されていない産業は必ずあるはずです。私たちはその新たな仕事が何なのか、現時点では本当の意味で説明できないのです。

しかし30年たてば、コンピュータが私たちの体内や脳に入り、我々をより賢くするでしょう。機械が私たちを有能にしてくれることを知っているので、私たちは技術を生み出そうとするのです。

バーチャル空間の実現で資源や食料の心配はなくなる

200年前は、現在の先進国でさえ非常に貧しい状態で、平均寿命は37歳ぐらいでした。私たちは、確実に人生の質を向上させています。人が長生きをすれば、人口が増えて資源が欠乏するという人がいます。しかし、新たな技術を使えば、私たちは無限の資源を手にすることができるのです。

エネルギーを例に挙げましょう。太陽エネルギーが占める割合は毎年倍増していて、それが30年続いています。4年前にこの研究をしていたとき、太陽光発電は世界のエネルギーの0.5%にすぎませんでした。

「たった0.5%だって? やってもいいけど問題解決にはならないよ」

多くの人はそう言いました。指数関数的増加を無視していたからです。当初は、0.5%からスタートしても、指数関数的に2倍に増えていく。8回繰り返すと、なんと100%を超えます。倍増するペースを保つのに十分な太陽光もあります。私たちの前には、将来必要とする量の1万倍もの太陽光が存在しているのです。将来的には、安価で環境を破壊することのない太陽エネルギーで私たちのエネルギーニーズを満たす時代がやってきます。

そしてそれは、太陽光全体の1万分の1しか使用しないで実現できるのです。化石燃料をはじめとする、19世紀の技術に規制されていると資源は尽きてしまうでしょう。しかし、指数関数的に成長している21世紀の技術を採用すれば、人類には無限の資源が提供されます。

また、新規の食品生産技術が人類を幸せにするかもしれません。これは「垂直農業」と呼ばれるものです。現在、地球上では3分の1の土地を農業に使用しています。これからの時代は、人工知能でコントロールされた垂直な建物で高品質の食品を生産することができるようになります。

環境に負荷をかけないような形で栄養をリサイクルし、果物と野菜は農薬や化学物質なしに養液で栽培されます。実験室ではクローンの肉を作ります。環境にまったく負荷をかけることなく肉を生産するのです。動物が苦しむことはありません。そして、何にもまして安価です。

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