文明は、過去も将来も指数関数的に進化する カーツワイル氏が語る「シンギュラリティ」

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レイ・カーツワイル(Ray Kurzweil)●ニューヨーク生まれ。世界屈指の発明家、思想家、未来学者であり、この20年のさまざまな出来事を予言してきた。アメリカの「発明家の殿堂」に名を連ね、「ナショナル・メダル・オブ・テクノロジー」「レメルソン-MIT賞」など優れた発明に贈られる世界最高峰の賞を数々受賞。現在はグーグルでAIの研究開発に携わっている。著書に『ポスト・ヒューマンの誕生-コンピュータが人間の知性を超えるとき』(NHK出版)。
科学やテクノロジーの進展により、人工知能が人間の知能を上回るのが今から30年後の2045年といわれている。そのとき、私たちの生活はどう変わるのだろうか――。NHKスペシャル「ネクストワールド 私たちの未来」(NHK総合。第3回1月24日、第4回1月25日放送予定)に出演する、未来学者のレイ・カーツワイル氏に語っていただいた。

 

人工知能の進化は、人類の「全知性」を10億倍にする

みなさんのお手元には、手の平サイズのスマートフォンがあると思います。もちろん、私も持っています。このスマートフォンの性能がどのように変化してきたかご存じでしょうか。

1970年前後、私はマサチューセッツ工科大学(MIT)の学生でした。当時実験に使用していた最先端のコンピュータは、今のスマートフォンの数十億分の1の性能しかありませんでした。当時、スマートフォンと同じ性能のコンピュータを作ろうとしたら、およそ10億倍ものコストがかかったはずです。大きさにしても、手の平に乗るスマートフォンは、当時の大型コンピュータに比べてわずか10万分の1になっています。

あのときから45年。この間に遂げた性能、コストパフォーマンス、キャパシティの著しい発展はすさまじい勢いです。実は、それはさらに続きます。しかもここから先は、指数関数的な増加を見せると考えられているのです。

ご存じのように、指数関数は、爆発的な伸びを見せる関数です。直線的な数字では「1・2・3・4・5」と進んでいくところ、指数関数は「1・2・4・8・16」と進んでいきます。5回目ではそれほど大きな違いに見えませんが、30回を超えるとどうでしょうか。直線的な数字の進行では「30」ですが、指数関数的な進行では「10億」になります。40回を超えると「40」に対して「1兆」、その差はもはや比較の対象にすらなりません。

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指数関数的に発達した30年後の2045年、コンピュータの進展とともに人類はどうなっているでしょうか。私はこう考えます。

「人類の生物学的知性とコンピュータの人工知能を組み合わせた『人類文明の全知性』は、現在に比べて10億倍になっている。そのとき、コンピュータは血液細胞とほぼ同じ大きさになっている。人類は脳の内部にこのテクノロジーをはめ込み、脳をクラウド上に置き、思考をさらに大きくする――」

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