FRBのインフレ退治は「景気後退、株価崩落」を招く アメリカ経済の「雇用バブル」を無視できない

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みずほリサーチ&テクノロジーズの小野亮氏は、アメリカは雇用と景気を犠牲にしなければインフレ抑制ができないおそれがあると指摘する。

タカ派色を強めるパウエルFRB議長だが、まだ見方が甘い?(写真:EPA=時事)

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年明け早々、株式市場が動揺する中でも、1月27日のFOMC(連邦公開市場委員会)でパウエル議長はタカ派姿勢を示した。
アメリカの高インフレが長期化する中、FRB(連邦準備制度理事会)は2021年11月以降、金融政策の正常化へ急速に傾いてきた。「インフレ抑制は雇用の安定のためにも必要だ」というロジックに変えてくるのでないかと、早くから指摘していたのがみずほリサーチ&テクノロジーズの小野亮プリンシパルだ。
小野氏はさらに、今のアメリカ経済の問題は、供給制約にとどまらず、需要がかつてなく強いことであり、雇用を犠牲にせずインフレを抑制しようという今のFRBのもくろみは、画餅に終わり、景気後退が避けられないおそれがあると指摘する。

 

――1月27日のFOMC後の会見でパウエル議長は3月の利上げ、その後あまり間を置かずにQT(量的縮小)、すなわち市場のマネー吸収に着手する必要があることを語りました。しかし、市場の想定を大幅に超えるものではなく、株価の下落は小幅にとどまりました。

1月FOMCでは「まもなく利上げが適切」として3月利上げを示唆したほか、バランスシート政策に関する基本原則を発表し、年内のQT着手に動き始めた。背景には、アメリカ経済が、もはや強力な金融緩和を必要としないほど強いことがある。

2021年終盤からのFRBの議論で注目すべきは、高いインフレ率の原因が、市場で認識されている供給制約の問題ばかりでなく、強すぎる需要にもあるという両論併記になってきたことだ。供給制約は金融政策では何ともならないが、需要を抑制する必要があるとなれば、金融政策で動かせる。

中でも、1月FOMC後の記者会見でパウエル議長も指摘したように、労働需要が歴史的な強さとなっている。その結果、雇用コスト指数や時間当たり賃金の上昇率が急加速している。

さらに、消費者の賃金上昇期待が2000年以降の好況期の天井だった年率3%を上回ってきた。パウエル議長は物価と賃金のスパイラル的な上昇による、高いインフレ率の定着ということをキーワードにしはじめた。

「雇用バブル」が発生している

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