「ノームコア」で行こう!気張った服はダサい お手本はジョブズやザッカーバーグ
スポーツブランドのロゴが大きく入った真っ白なTシャツ。フラットなスリッポン。白いスニーカー。ストーンウォッシュ・ジーンズと真っ白なソックス。着古した大判のシャツ――。今、米国のミレニアル世代を中心に、「Normcore(ノームコア)」と呼ばれるファッション・文化スタイルがじわじわと広がっている。
ノームコアとは、「ノーマル」と「ハードコア」を合わせた造語だ。派手なファッションに背を向け、着心地がよく、カジュアルでシンプル、質素であることを追求する。人との違いよりも、人と同じであるという「同一性」をよしとし、「究極の普通」であることを楽しむスタイルだ。
同一性を受け入れるのがクール
ファッションが限りなくシンプルに近づけば、おのずと本人の中身や個性が浮かび上がる。洋服に個性を語らせるのではなく、その人自身にフォーカスしようとする消費者心理の表れだと分析するのは、小売業界で約30年のキャリアを持つシェリー・コーハン氏だ。
同氏は、ニューヨーク本拠の高級百貨店チェーン、サックス・フィフス・アベニューなどで幹部を歴任し、ニューヨークのファッション工科大学(FIT)の教壇にも立つ小売業界の専門家だが、ノームコアは「ノンファッション(非ファッション)トレンドでもある」と言う。
そもそもノームコアとは、ニューヨークのトレンド予想グループ「K-Hole」が生み出した言葉だが、当初は特定のファッションやスタイルを意味するものではなかった。同グループが2013年10月に発表した「若者モード:自由に関する報告書」では、特別な存在になろうと躍起になって差別化を図るよりも、「同一性」を受け入れることをクールだとみなす態度やセオリー(理論)のことだった。
同報告書によれば、共同体の中で自分よりも「まず個人ありき」の現代にあって、人は孤立しがちだ。「排他性」を捨て「順応性」を取り入れ、人とのつながりを大切にする姿勢ーーそれがノームコアだと提唱した。
そうした生き方を地で行くかのように、ミレニアル世代の間では、画像共有サービス「インスタグラム」などにアップされる同世代の「ダサくて普通すぎる」格好に触発された、シンプルなストリートファッションが広がっていった。こうした中、ファッション業界が千才一遇のチャンスとばかりに、「ノームコア」をバズワード(業界の流行語)として発信。「ハッシュタグにうってつけの言葉として、ソーシャルメディア上で広まった」と、米西海岸オレゴン州ポートランドのファッション・フューチャリスト(未来研究者)、レズリー・スコット氏は分析する。
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