ルーブル暴落ショック、「ロシア売り」止まず 原油価格下落が引き起こす、ロシアの窮地
FRB(米連邦準備制度理事会)のイエレン議長も、ロシア通貨・ルーブルの下落には打つ手なしだった。市場の予測どおりに「相当の期間」(considerable time)、低金利を維持するとの文言を声明文から削除しつつ、利上げには「忍耐強く」(be patient)と慎重な姿勢を強調したのみ。原油安については米国にはプラスのほうが大きいとし、ロシアについては影響が限定的、と素っ気なかった。米国がもはや世界のリーダー役を担う時代ではないことが実感される。
まさにつるべ落とし──。
2014年12月1~15日に、原油価格(北海ブレント)は13%下落し、ルーブルは23%も急落した。ロシア中央銀行は14年に政策金利引き上げを5回行ったが、6回目に当たる12月16日には一気に6.5ポイント引き上げ、年17%に。が、効果なく、1ドル=70ルーブル台に一時続落。翌17日には、ロシア財務省が通貨介入を行っていると発表。束の間戻したが、再び下落に転じた。通貨防衛はことごとく失敗している。
ロシアはサウジアラビアに次ぐ世界第2位の産油国。GDP(国内総生産)の75%を石油と天然ガスに依存する。ウクライナ問題に伴う米欧からの経済制裁も、ロシア経済を締め上げている。14年夏以降、原油価格が下降線を描くとともに、比例してルーブルも下落を続けてきた。
11月28日、OPEC(石油輸出国機構)が減産を見送り、原油価格の下落には歯止めがかからないとの見方が市場に広がるや、投機筋による原油先物売り、ルーブル売りに拍車がかかった。
原油安はどこまで
ウクライナ情勢がこう着状態のままなら、カギを握るのは原油価格の動向だ。原油価格はどこまで下がるのか。
住友商事グローバルリサーチの高井裕之社長は「1日当たり100万~150万バレルが供給過剰なので、需給が調整されるまで市場は不安定。年明けにニューヨークWTI価格で1バレル=50ドルを切るリスクは見ておく必要がある」と占う。ただ「現状は明らかに投機によるオーバーシュート。2015年後半に供給調整と需要増加により、WTIで60ドル、北海ブレントで70ドル前後に落ち着く」との見方だ。
では、それまでロシア経済は持ちこたえるのか。
第一生命経済研究所の田中理主席エコノミストはこう指摘する。「高いエネルギー価格を背景にした“強い経済”に対する国民の信頼、石油利権で潤っている取り巻きの支持が、プーチン大統領の強みだった。それだけに求心力が低下するおそれもある」。
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