スマホゲーム、”一発屋”を脱するのはどこだ 「パズドラ」「黒猫」そして「モンスト」の行く末

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新たな遊び方の提案に加え、スマホゲームは課金率を低く抑えた点でも相通ずる。ガラケーのソーシャルゲームで一世を風靡した「グリー」「モバゲー」が、ゲーム上のくじを引く「ガチャ」というアイテム課金収入を重視し、社会的非難を浴びた手法とは一線を画した。無料でも十分遊べることでユーザーを増大。課金率はソーシャルゲームの約10%に対し、スマホゲームは3~5%にとどまる。課金率が低くても、裾野拡大とともに収入が増える、好循環を生み出したのだ。

ガンホーやミクシィと並び、ヒット連発で存在感を放つのが、コロプラだろう。2013年3月に配信したクイズ&カードバトルRPG『魔法使いと黒猫のウィズ』が大ヒット。今年7月配信のワンフィンガーRPG『白猫プロジェクト』もヒットを記録した。「2本もヒットさせた実力はすごい」(ゲーム会社幹部)。

同社の経営の特徴は、自ら“ムカデ足戦法”と呼ぶゲームの多様性。クイズやアクション、スポーツなど幅広いゲームジャンルをそろえることで、ヒットの当たり外れのリスクを分散させる。馬場功淳社長は、「ユーザーの好みは変わってきており、新たな遊び方に積極的にチャレンジしている」と言い切る。

非ゲームか、海外か

豊富に稼いだキャッシュを、これからどう活用するかは、まさに三者三様だ。

ガンホーの場合、資金は新作ゲーム開発とM&Aに投じる。スマホのみならず、家庭用ゲーム「プレイステーション4」向けも開発、あくまでゲーム会社として成長を目指す。対照的にミクシィは、モンストに続くゲームのパイプラインを持たず、M&Aを積極化する考え。それも「ゲームに限らず、ネット業界で再編を起こしたい」(荻野取締役)。コロプラは本格的な海外展開をにらみ、エンジニアの採用を急増、自社で拡大していく方針である。

ただ現状は「タッチパネルを使ったスマホゲームで新たな体験を提案するのが難しくなっている」。UBS証券の武田純人アナリストはそう見通す。ユーザーの奪い合いが激しさを増す中、斬新さを打ち出せなければ、たちまち埋もれる。賞味期限が切れないうちに、いかに次の「食いぶち」を確保できるかだ。

1年先はどうなっているかすらわからないスマホゲーム。“一発屋”で終わらないために、後のない各メーカーの懸命な奮闘が続く。

「週刊東洋経済」2014年12月6日号<1日発売>核心リポート03を掲載)

前田 佳子 東洋経済 記者

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まえだ よしこ / Yoshiko Maeda

会社四季報センター記者

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