外食産業を喰い尽くす、3Dプリンタの破壊力 突然やってくるビジネスモデルの激変

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このような技術革新から描ける将来を考えた場合、外食業界、食品業界の企業は今後どのような行動をとるべきだろうか。変化にいち早く適応していくための次の一手は何だろうか。

たとえば、外食店舗では客の目の前で調理をするなどのパフォーマンス、ホスピタリティあふれる上質なサービスといった「家では享受できないもの」を作る必要があるかもしれない。また、外食企業は自社メニューを成分単位でレシピ化し、データとして販売するビジネスが考えられる。それに伴い、食に関わる企業でも、情報セキュリティ機能の強化が重要テーマとなる可能性もある。

「3Dプリンタ」と「食」は一見関係なさそうな組み合わせだが、「3Dプリンタ」という先端技術が、「食」と結びつくと、「食」の業界を根底から変える「業界変革」を引き起こすかもしれないのだ。

重要なのは情報の意味づけ

「業界変革」が起こると、これにいち早く気づき、それに適応できる企業のみが生き残れる。そう聞くと「業界変革に早く気づくためには情報が必要だ」と思うであろう。

しかしながら昔と違って、現代ではインターネットを駆使すれば、情報はいくらでも手に入る。ただ「業界変革」に気づくには情報を知るだけでは不十分だ。3Dフードプリンタが「食」の業界にとってどのような意味を持つのかを考え、業界に何が起きるかを予測する。そうすることによって、はじめて「業界変革」を先読みできる。

これは外食以外の業界について考える時も同じだ。情報があふれている現代では、情報自体がもはや重要ではない。大事なのは「情報の意味づけ」である。あらゆる情報にアンテナを張りめぐらせ、得た情報を「自分事としていかに意味づけるか」、「どういった示唆が考えられるか」を考えることこそが重要である。

最初はある情報が「自分にとって、ポジティブなのかネガティブなのか」を自問する、という単純な訓練から始めればよい。そういった基本動作を日々続けていけば、業界変革に対する嗅覚も徐々に上がってこよう。

田中 大貴 M&A戦略コンサルタント、MAVIS PARTNERS 代表取締役

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たなか だいき / Daiki Tanaka

早稲田大学商学部卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社、その後、ジェネックスパートナーズ、マーバルパートナーズ(現PwCアドバイザリーのDeals Strategy部門)、ベイカレント・コンサルティングのM&A Strategy部門長を経て現職。一般社団法人ポストM&A研究会 代表理事、グロービス経営大学院にてファイナンス講師も務める。

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山田 英夫 早稲田大学ビジネススクール教授

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やまだ ひでお / Hideo Yamada

1955年東京都生まれ。早稲田大学大学院経営管理研究科(ビジネススクール)教授。慶應義塾大学大学院経営管理研究科修了(MBA)。三菱総合研究所にて大企業の新事業開発のコンサルティングに従事。1989年早稲田大学に転じ、現職。専門は競争戦略論、ビジネスモデル。博士(学術、早稲田大学)。ふくおかフィナンシャルグループ、サントリーホールディングスの社外監査役。主な著書に、『異業種に学ぶビジネスモデル』『競争しない競争戦略』『ビジネス版 悪魔の辞典』(以上、日本経済新聞出版社)、『成功企業に潜むビジネスモデルのルール』(ダイヤモンド社)、『マルチプル・ワーカー 「複業」の時代』(三笠書房)、『ビジネス・フレームワークの落とし穴』(光文社新書)など。

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