ゆるキャラは、地方創生に役立っているのか 「地域活性化」という曖昧な言葉に騙されるな

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冷静に考えれば、一過性の人気商売で、さらには、まったく別の次元でガチの企業も参入してやっているキャラクタービジネス領域に、自治体が税金をブチこんで全国区で戦うということ自体、全く合理的ではないわけです。稀有な一部の成功事例に引き込まれて、皆でそこに参入して「二番煎じ、三番煎じ」を争い、殴り合いを「税金」を使ってやるわけです。不毛としかいいようがありません。

一般的に言って、日本の自治体の財政は「火の車」であるところも少なくないのです。もっと地元経済の中で改善できることがヤマほどあるというのに、なぜか、外を向いて「ゆるキャラ」で激戦を繰り広げてしまうわけです。

例えば、先日、「財政破たん懸念」を発表した千葉県の富津市でさえ「ゆるキャラ」の取り組みをしていて、「おーい、大丈夫かー」、と思わず言いたくなってしまいます。もちろん、大丈夫ではないわけですが。

全国区で無駄な競争をするより、地元経済と向き合え

本来は、「ゆるキャラ」で全国区で戦う前に、地元の経済活動と向き合うべきです。個別の商品力を高め、付加価値をあげていこうとか、使わない地域内の遊休不動産などを活用して、新規開業者を増加させるなどの地味な取り組みのほうが、地域内で雇用も生まれ、他の自治体と不毛な競争に巻き込まれず、適切な設備投資などが促されるわけです。

しかし、例えば地元向けに自治体関係者が「そんな低生産的な仕事をやめて、もっと工夫しろ」などと上から目線で言ったら、ひんしゅくを買いますよね。結局、自治体は、頑張ってキャラクターをヒットさせて、関連商品で地元企業が一時的にでも儲かれば、そっちのほうがありがたがられるってわけですから、ついそっちのほうをを選択してしまいがちになる、というわけです。ヒットするのは一部だけですから、ほとんどは経費を無駄に使って終わるだけになってしまうのですが・・。

自治体が取り組む地域活性化策は、大抵はその時に話題になっていることや、数字の根拠が必ずしもはっきりしないのに、一見大きな経済効果が示されるようなネタに、集中しがちです。

しかし、「ゆるキャラ」のように、皆で一気に参入、ガチで殴り合いをして、互いに憔悴しきってしまって最後は尻すぼみで終焉を迎えることも少なくありません。どの地域も幸せにならない「不毛なる戦い」が、毎回のように繰り広げられてしまう。そのうちに「これはもはや時代遅れ。効果がなくなった」などと言い出して、次なる不毛なる戦いとなる「カッセイカジギョウ」を探し求めていくのです。

全てとは言いませんが、こんなことばかりを繰り返しているから、ずーっと活性化事業に数十年取り組んでいるはずの、地方自治体の歳入はなかなか増えず、歳出だけが増加して自治体財政が悪化していくばかりなのです。そうこうしているうちに、「自治体が破綻するー」と大騒ぎになって、「地方創生だー!!」 などといった話にもなっているわけです。

「ゆるキャラ」からわかる教訓としては、少なくとも、自治体が主導する地域活性化に期待することは、やめたほうがいいということなのです。地道に地域で民間が事業を積み上げていくことが、一番信用できる地域活性化であると思います。

木下 斉 まちビジネス事業家

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きのした ひとし / Hitoshi Kinoshita

1982年生まれ。高校在学時からまちづくり事業に取り組み、2000年に全国商店街による共同出資会社を設立、同年「IT革命」で新語流行語大賞を受賞。

早稲田大学政治経済学部政治学科卒業、一橋大学大学院商学研究科修士課程修了。

2008年に設立した熊本城東マネジメント株式会社をはじめ全国各地のまちづくり会社役員を兼務し、2009年には全国各地の事業型まちづくり組織の連携と政策提言を行うために一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンスを設立。2015年から都市経営プロフェッショナルスクールを設立し、既に550名を超える卒業生を輩出。2020年には北海道の新時代に向けた「えぞ財団」を仲間と共に発足している。また内閣府地域活性化伝道師等の政府アドバイザーも務める。

著書に『まちづくり幻想』『稼ぐまちが地方を変える』『凡人のための地域再生入門』『地方創生大全』等多数。

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