東京製鉄の異色経営、価格とエコを武器に挑戦状

東京製鉄の異色経営、価格とエコを武器に挑戦状

10月18日、鉄鋼業界に衝撃が走った。東京製鉄による鋼材価格の大幅値下げ。11月売りのH形鋼とホットコイル(熱延鋼板)で前月比5000円も下げたのだ。値上げに努めてきた同業他社は悲鳴を上げている。「東鉄ショック」である。

国内電炉最大手の東京製鉄の経営は異色だ。業界団体に属さず、原料購入価格は市況動向に合わせ日々更新し、製品販売価格も毎月見直し、その価格表はホームページ上でオープンにする。間接部門は簡素で、虎ノ門の本社は賃貸ビルのワンフロアのみ。社長も常務も若手社員も同じ大部屋で働く合理経営である。

利益は、鋼材販売価格と原料スクラップ価格の差で決まるが、足元の業績は厳しい。攻撃的な価格設定はしたが、内需不振、円高進行で輸出もできず、新工場の償却負担と立ち上がりの不調もたたり、中間期では15億円の営業赤字に沈んだ。ただ、自己資本比率は7割を超し、王者、新日本製鉄にH形鋼戦争を挑んでいた、1990年代の9期連続赤字にも耐えた財務力は今も健在だ。

今回の価格改定に、大堀直人常務は「輸入材の流入に対抗し、水面下の価格に合わせた」と説明したが、需給が比較的タイトだった鋼種でも原料価格の下落以上に引き下げた。 

この価格改定。他社からシェアを奪う戦略的な意味合いもある。西本利一・東京製鉄社長は、「価格は起爆剤、一度使ってもらわないことには入っていけない」と、低価格の意義を説明する。過去には需要の強い厚板で一気に7000円下げ、劇的にシェアを増やしたこともあった。

もう一つ強力な武器としているのが「環境」。CO2を75%削減できるという強みを前面に出している。粗鋼生産のトン当たりCO2排出量は、08年度数値で東京製鉄0・47トンに対し、高炉は2・06トン。電炉に替えるメリットを主張する。

業界団体に属さない東鉄だが、今年3月に、日本気候リーダーズ・パートナーシップに参加。富士通やイオンらと8社で、閣僚との意見交換会を持ち、持続可能な低炭素社会の実現に向けた提言も行っている。環境政策の進展は追い風となるのだ。

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