インタビュー:車載・住宅の戦略投資へ、欧州白物家電も検討=パナソニック社長 Panasonicのブランド力が十分ではないため

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 11月10日、パナソニックの津賀一宏社長(写真)は、ロイターとのインタビューで、欧州市場の白物家電の強化のため、現地でのM&Aを検討していることを明らかにした。(2014年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 10日 ロイター] - パナソニック<6752.T>の津賀一宏社長は10日、ロイターとのインタビューで、2015年度から加速する戦略投資について、車載・住宅分野を中心に、数百億円規模の案件を複数検討していることを明らかにした。また、欧州市場の白物家電も、戦略投資の検討対象になるとの考えを示した。

パナソニックは2014年度の連結営業利益予想を3500億円に上方修正し、2015年度の中期経営計画の目標値を1年前倒しで達成する見込みになった。津賀社長は「普通の会社になることが短期的な目標だったので、それに近づくことができた」と述べ、11―12年度の2年間で1.5兆円の巨額赤字を計上した時代から「復活」したとの認識を示した。

これを受けて、成長戦略に舵を切る。2018年度の連結売上高10兆円目標(2014年度見通しは7兆7500億円)に向けて、2016年度に予定していた戦略投資を1年前倒しし、来期から加速する方針だ。

津賀社長は「為替にもよるが、来期は8兆円の売上高がターゲットになる」との考えを示した。そこから2兆円の積み増しについては「車載と住宅で1.5兆円を伸ばしていく。ここがわれわれの最優先事項になる」と述べた。

戦略投資は、通常の設備投資の別枠で、資本提携やM&A(合併・買収)も含めて検討。津賀社長は「すでにカンパニー単位で検討してもらった結果を本社でまとめて、どんな優先順位で投資をするかを詰めている」と明かした。現段階では「案件も投資エリアも非常にたくさんある。ただ、1件1件は大きなものではなく、リーズナブルなサイズのものがたくさんあるイメージだ。一部交渉に入っているものもある」と語った。

戦略投資の枠は上限を設けずに検討しているが「リーズナブルなサイズは数百億円。分野によっては数十億円規模でも面白い協業ができる」と述べた。ただし「大きくて複雑なM&Aはあまり考えていない」とも述べ、三洋電機で経験した8000億円規模の巨額買収には否定的な考えを示した。

<目標達成は車載に手応え>

車載も住宅もそれぞれ2018年度に2兆円の売上高にするのが目標だが、津賀社長は「手応えが一番あるのは車載分野だ」と指摘。車載事業は、(1)カーナビやカーオーディオをはじめとする運転席周り、(2)電池、(3)先進運転支援システム(ADAS)ー─の3分野に重点を置く。

 津賀社長は「パナソニックは(自動車の)メガサプライヤーになれるかどうかの瀬戸際。そのためには『Tier1』と組むのが不可欠だ。M&Aで最も多くなるのは、ADASの分野になるかもしれない」と語った。

米電気自動車、テスラ・モーターズ<TSLA.O>が米国ネバダ州に建設するリチウムイオン電池工場への投資も戦略投資の位置付けだ。テスラは、同工場への総投資額が2020年までに総額50億ドルになるとしている。

テスラの電池工場へのパナソニックの投資は、来期から数百億円規模でスタートする。津賀社長は、その後の投資スタンスについて明言を避けたが「われわれは、テスラが必要な電池が足りなくなるということは避けなければならない」とだけ述べた。

<欧州の白物家電のM&Aも>

津賀社長は「欧州の白物家電は、市場をよく知っているパートナーが不可欠」と述べ、現地企業との資本提携やM&Aを検討していることを明らかにした。パナソニックは2013年にスロベニアの家電最大手ゴレーネ<GORE.LJ> と資本業務提携を結んだ。ゴレーネとの関係強化だけでなく、その他の企業との協業も目指していく。

また、欧州市場でのパナソニックの競争力について「テレビやデジタルカメラのイメージが強く、白物のブランドイメージはあまりない」と指摘。その上で「ブランドイメージのためにもパートナーシップは必要だ」と述べ、現地の白物家電のブランド買収の展開もあり得るとの考えを示した。

パナソニックは2008年に、旧松下電器産業から社名変更して以来、「パナソニック」ブランドへの統一を進めてきたが、今年から高級オーディオ「テクニクス」のブランドを復活させる。津賀社長は「商品名ではパナソニックにこだわらない。テクニクスのほうがパナソニックよりもプレミアム感が出るなら積極的にやる。これはキッチン(白物)においても同じことだ」と語った。

<資金に縛られず、一時的な財務悪化も容認>

パナソニックは2014年9月末、ネット資金(現預金―有利子負債)がプラスになった。2009年末に三洋電機を子会社化して以来「負債超過」が続き、2011年にはネット資金のマイナスが一時1兆円を超えるまで財務が悪化したが、5年ぶりに「実質無借金」に復帰した。

2013―15年度の中期経営計画では「ネット資金のプラス化」は最も重要な経営指標だったが、同日のインタビューで津賀社長は「もはや資金がなくて投資ができないという段階ではない」と指摘。さらに「投資はタイムリーにやるのが最も重要だ。ネット資金のプラスの維持が絶対の条件ではない」と語り、戦略投資にあたっては、社債発行や借り入れによって一時的に財務が悪化することを容認する考えを示した。

*見出しを一部修正しました。

(村井令二、安藤律子 編集:内田慎一)

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