ところで前出のように、10月20日のコラムなどでも紹介しているが、日本銀行による金融緩和やそれがもたらした円安に対する的外れな批判が世の中ではなお多い。例えば「円安倒産急増」といった報道は、ヘッドラインだけで強調されたものにすぎなかった。
企業倒産はこれまでほとんど増えず、これまでの円安は確実に日本経済を回復させている。またこれと同類だが、夏場には「人手不足が問題である」などと言われたが、これもデフレに慣れきった一部マスコミによる一面的な見方だったと言えるだろう(7月7日付のコラム「人手不足の何が問題なのか」を参照)。
もう一つ、金融緩和・円安批判として代表的な意見が「円安にしても輸出がまったく増えていないから」というものだ。これはいろいろと反論の余地が大きいのだが、それでは、この見方のどこが問題なのか?
まずは、「円安にしても輸出が増えていない」というのは批判になっていない。「もし円安ではなかったら、輸出は減っていたのではないでしょうか」と一蹴すれば終わりである。
円安で日本企業の価格競争力は高まっている
そうすると「もう円安になっても輸出は増えないようになっている」という議論になるが、自国通貨が安くなれば国際市場での価格競争力が高まるメカニズムが働かないわけがない。
このメカニズムが働かないなどというのは、経済原理を無視している。例えば2014年になってから外国人の日本への旅行者が増えていることを考えれば明らかだろう。外国人旅行者が増えているのは、円安(円高修正に過ぎないが)によって日本の観光サービス業の価格競争力が高まっていることがかなり影響しているのは明らかで、これは「サービス業の輸出」が大きく増えているということである。
日本のモノの輸出が増えてないのは、円安の効果が小さいのが理由ではない。冒頭で説明したように、2014年は米国以外の各国の成長率が減速してしまい、世界経済の成長率が高まらなかったことが、日本からのモノの輸出が増えない大きな要因になっている。
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