「40人学級復活提案」の裏側にあるもの 「財政難を理由に、教育切り詰め」は本当か

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結局、先の文部科学省の検討会議では、35人学級が公立小学校1年生で35人学級を導入された後、2011年9月に「中間とりまとめ」を公表し、公立小学校2年生にも35人学級の実施を提言した。まさに、学年が上るにつれて35人学級を適用して、最終的には全国の公立中学校3年生まで全学年で35人学級…という思惑が見え隠れしていた。

35人学級は小学校1年だけ、という中途半端な状態

ところが、2012年度の政府予算では、公立小学校2年生の35人学級の実施は盛り込まれなかった。すでに35人学級となっている小学1年生が2年生に進級する際に支障がないように予算上手当てするにとどまった。その後の経緯は省略するが、結局、今日に至るまで、35人学級は小学校1年生だけにとどまり、小学校2年生以上は従来通り40人学級のままとなっている。

そうこうしているうちに、第2次安倍内閣となり、幼児教育無償化の案が急浮上する。幼児教育無償化とは、3~5歳児の幼児教育にまつわる保護者の負担を実質ゼロにすることを目指すもので、民主党政権の前から、自民党や公明党で案が出されていた。第2次安倍内閣になって、具体化に向けた議論がさらに進んだ。

冒頭の財政制度等審議会の議論は、まさにこの流れを踏まえたものなのである。単に、公立小学校だけの話を取り出して40人学級復活と言ったわけではない。目下、文部科学省の進め方として、幼児教育無償化の実現に力が入っている。それと比べれば、35人学級は公立小学校1年生にとどまり、2年生以上にすることには相対的に不熱心に見える。35人学級は小学校1年生止まりという中途半端な状態なのである。

ならば、わが国の幼児・初中等教育の大方針としてどうするのか、が問われる。小学校1年生だけ35人学級を維持しつつも、幼児教育無償化を積極的に進める、というのは、どんな教育制度を意図するのか。グランドデザインが見えない。揶揄していえば、時の政権が欲する案をその都度予算要求しているだけの結果になっているのかもしれない。

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