フィットの不具合連発を招いたホンダの内情 独特な組織体制に潜んでいた弱点

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これが品質問題の一因になってしまった。今までホンダは基本的に内製か、もしくは関連会社製のギアボックスを使ってきた。しかし、外部サプライヤーとの仕事となれば、従来のように阿吽の呼吸ですべて物事がうまく進むというわけにはいかなくなる。

そもそも、こうした従来のやり方にも、どうやら問題が潜んでいたようだ。これはホンダという会社のクルマづくりの特殊性と言い替えることもできる。

ここで便宜上「ホンダ」と呼んでいる会社は、本田技研工業株式会社である。一方、本田技研工業で販売されているクルマを開発しているのは株式会社本田技術研究所。もちろん資本関係はあるが、つまり別会社だ。そこを踏まえる必要がある。

技術的な開発作業は「研究所」が担当

ホンダ車の商品企画などは原則として、本社所在地からホンダ社内や自動車業界関係者の間で、「青山」と呼ばれる本田技研工業の部門でまとめられるが、技術的な開発作業は本田技術研究所、通称「研究所」が受け持つ。本社の商品企画などを基に1台のクルマを仕立てるのは研究所の仕事だ。

そして研究所は、1台のクルマの開発が終わると、その設計図面を青山に引き渡す。研究所の仕事はそこで終わり。あとは青山が、図面通りのクルマを生産し、販売する。

トヨタや日産自動車、マツダなど日本の他のメーカーを見ると、企画、調達、開発、生産、販売はそんなふうには分かれていない。たとえば開発部門は、実際に量産が立ち上がるまで生産性を高め、不具合を見直し、より高い品質を得るために最後まで生産部門と一体となって擦り合わせを行ない、クルマのブラッシュアップを続けるのが一般的だ。

数万点の精密部品で構成されている自動車では仮に図面上はうまく動いていても、生産時の微妙な品質の誤差のおかげで、実際には正しい動作が出来ない可能性が生じることもある。そんな時には、開発部門が設計の見直しを行うことだって、ごく普通にある。

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