フィットの不具合連発を招いたホンダの内情 独特な組織体制に潜んでいた弱点

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今回の一連のトラブルは、まさにこの量産に向けた擦り合わせの問題から引き起こされた。ホンダの場合、ここは本社の領域だが、あるいはここで研究所での設計や制御の見直しまで含めた綿密な作業ができれば、話は違っていた可能性もあるだろう。もちろんホンダにも品質管理部門はある。ただし、そこは市場に出た製品についての不具合を吸い上げるのが主目的の組織だったのだ。

しかしながら度重なるリコールという重い事態に鑑み、ホンダも遂に組織改革に踏み切った。本田技研工業の福尾幸一常務執行役員が、本田技術研究所の副社長を兼任し、開発領域にある新技術について、また今後登場する新型車に関しては、量産開始まで研究所が責任をもつ体制に改められたのである。

軽自動車「Nシリーズ」では一貫体制を構築

実はホンダの最新世代の軽自動車である「Nシリーズ」(「N-BOX」「N-WGN]「N-ONE」など)では、鈴鹿工場に開発から部品調達、生産、営業まで集結した開発体制が採られ、好結果に繋がっていた。今後はすべてのモデルについて、研究所のお墨付きが得られるまでは世に出ることはなくなる。これまでの「新しいものをできるだけ早く」という考え方から「しっかり熟成してからユーザーに届ける」という転換が図られた。

この体制変更が吉と出るか凶と出るかは、まだ見えない。ホンダらしさが薄れるという危惧もある。しかし、リコール対策に追われて新車投入スケジュールが大幅に遅れ、目標としていた2014年度の国内販売100万台の達成に暗雲が立ち込めている現状からすれば、他に道はなさそう。焦ってニューモデルを投入しても、もしまたリコールのような事態になればダメージは致命的となる。ようやくの決断、ユーザーのためにも吉と出ることを願いたい。

島下 泰久 モータージャーナリスト

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しました・やすひさ / Yasuhisa Shimashita

1972年生まれ。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。走行性能からブランド論まで守備範囲は広い。著書に『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)。

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