三菱重工MRJ、世界戦に待ち受ける「関門」 ついに長年の夢が実現したのだが・・・

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格納庫に入るMRJ。最新の航空力学を駆使した流線型の機体は、空を舞う鶴を連想させる

会場内に和太鼓の音が鳴り響く中、格納庫の扉が開くと、まばゆい日差しを浴びて輝く機体が現れた。細長いシャープなボディの側面には、赤いスリーダイヤのマークと「MITSUBISHI」のロゴ。「三菱リージョナルジェット(MRJ)」が、ついに姿を見せた瞬間だ。

三菱重工業が社運を懸けて開発を進めるMRJは、70~90席クラスのリージョナルジェット機(地域路線用の小型ジェット旅客機)。かつてオールジャパンで開発されたプロペラ機の「YS―11」(1973年に生産終了)以来、実に半世紀ぶりに誕生する国産の旅客機である。

10月18日、三菱重工は名古屋空港に隣接する小牧南工場でロールアウト(完成披露)式典を開催。関係者ら500人以上を招き、飛行試験用の初号機を初公開した。式典であいさつに立った三菱重工の大宮英明会長は「自分たちの手で国産旅客機を送り出すことは、長年の夢だった。最高レベルの経済運航性と快適性を兼ね備えた国産旅客機が形となり、ついに夢が現実に変わる」と熱い思いを口にした。

度重なる予定延期

MRJは最先端の空力設計技術と最新鋭エンジンの採用により、高い燃費・環境性能の実現を目指した次世代型の旅客機だ。三菱重工傘下で開発・販売を担当する三菱航空機によると、「競合他社の現行機に比べて、燃費性能は2割以上勝る」という。

2008年に始まった開発作業は困難を極めた。三菱重工は自衛隊の戦闘機などを手掛け、民間分野でも米ボーイング機の主翼・胴体製造などを担うが、自ら旅客機を開発するのはまったく勝手が違う。絶対的なノウハウ不足と膨大な作業で現場は混乱。度重なる予定延期に、実現自体を危ぶむ声も続出した。

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