三菱重工MRJ、世界戦に待ち受ける「関門」 ついに長年の夢が実現したのだが・・・

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三菱航空機の川井昭陽社長も安全認証の取得に気を引き締める

特に後者は「旅客機開発における最大の難関」(三菱航空機・川井昭陽社長)だが、さらなる遅延は致命傷になりかねない。最大の強敵、エンブラエルがMRJ潰しに動いているからだ。

エンブラエルは昨年、現行機を改良した「E2」シリーズの開発に着手しており、MRJと同じ米プラット&ホイットニー製の最新エンジンを採用する。これで燃費性能はMRJに肉薄。納入開始予定は18年前半で、17年前半を予定するMRJと大差ない。この1年余りでE2の受注は400機を超えた。

性能の優位性薄れる

MRJの受注機数は8月に日本航空と基本合意した分などを含めて407機。突出した燃費性能などを武器に海外の航空会社からも受注を獲得しており、「新規参入で、かつ、飛んでもいない段階としては上出来の数字」(三菱航空機の川井社長)ではある。

だが、エンブラエルのE2開発で、MRJ性能優位性は薄れた。機体の性能に大差がなくなれば、勝負を左右するのは、価格競争力や供給能力、納入後のサポートまですべて含めた旅客機メーカーとしての総合力だ。MRJは量産工場や顧客へのサポート体制もまだ計画段階。限られた時間で、機体の開発を着実に進めるだけでなく、こうした課題も一つひとつクリアしていく必要がある。

(撮影:尾形文繁)

(週刊東洋経済2014年11月1日号<10月27日発売>」掲載の「核心レポート02」を転載)

渡辺 清治 東洋経済 記者
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