タイプ音や咀嚼音で不調「ミソフォニア」という病 耳栓は自分を「音」から守るための重要なツール

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日常生活のなかで、当たり前のように聞こえてくる音に、強い拒否反応を示すミソフォニア(音嫌悪症)と呼ばれる人々。社会にどのような支援が求められるのでしょうか(写真:buritora/PIXTA)
せき、くしゃみ、そしゃく音、鼻をすする音、赤ん坊の泣き声、タイピング音、ペンのノック音……。日常生活のなかで、当たり前のように聞こえてくるこれらの音に、強い拒否反応を示す人がいる。ミソフォニア(音嫌悪症)と呼ばれる人々だ。
発症のきっかけとなる音は人によって異なるが、耳に入ることで怒りや逃避や不安など、さまざまな衝動に襲われる。音を出した人への攻撃衝動や、つらさで自殺衝動に駆られてしまう人もいるという。
ミソフォニアという言葉ができたのは2001年と比較的最近で、認知度はまだ高くなく、治療法も確立していないのが現状だ。2020年、当事者の大学生たち3名による日本ミソフォニア協会が発足。社会にどのような支援が求められるのか取材した。(ジャーナリスト・肥沼和之)

学校では勉強よりただ音に耐えることが多かった

――皆さんの苦手な音を教えてください。

高岡稜さん(以下、高岡):僕は小学5年生のときに発症し、高校3年生まで音に悩まされました。苦手だったのは鼻をすする音、せき払い、せきやくしゃみなど、人から出る音です。聞くと嫌悪感を覚えて、途端に集中力がなくなります。

通学の電車や授業中は、たくさんの生徒が周りにいるため、イヤホンや耳栓をつけて音から身を守っていました。学校では勉強するというより、ただ音に耐えることが多かったです。

当記事は弁護士ドットコムニュース(運営:弁護士ドットコム)の提供記事です

田中さん(仮名・以下、田中):私は小学校高学年から、高校卒業まで症状がありました。そしゃく音や鼻をすする音、麺をすする音。あとは時計の針の音、文字を書く音、ペンのカチカチという音など、繰り返される音が苦手です。耳に入ると急に不安な気持ちになり、その音だけが大きく聞こえて繰り返され、涙が出てしまうこともありました。

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