中国が「極端な貧富の差」の中で山ほど抱える難題 国内の社会矛盾増大、習近平政権に焦燥が見える

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儒教文化には子どもを家の所有物のように捉える側面があり、その影響は一人っ子政策が実施されてから一層中国社会に浸透していった。子どもの進学や就職、結婚や孫の誕生には、一族の命運が掛かっているといっても過言ではない。両親と4人の祖父母が1人の子どもに過剰な愛情と時間、金をかけるのである。

世界でも例を見ない一人っ子政策の副作用

さらに、一人っ子政策の深刻な副作用は、いびつな男女比にも現れている。2020年に実施された第7回全国国勢調査によると、男性が女性よりも3490万人も多く、総人口の男女比は105.07、農村人口の男女比は107.91であった。出生時の男女比は111.3と2010年の118.1よりは下がったが、依然高い水準を維持している。20~40歳を結婚適齢期とすると男性が女性より1752万人多く、男女比は108.9になる。

それゆえ、中国では「剰男」(売れ残りの男性)が深刻な社会問題となっている。結婚に際して男性側が多額の彩礼(結納金、住宅、車、贈り物)を準備しなければならない地域もあり、中国の大手IT企業・騰訊の「谷歌データ」によると、2020年の結納金の平均額は高い順から浙江省18万3000元(約330万円)、黒竜江省15万2000元(約270万円)、福建省13万1000元(約230万円)、江西省11万2000元(約200万円)となっている。大都市は低めで、北京市6万3000元(約110万円)、上海市7万2000元(約130万円)であった。

北京冬季五輪が開幕する直前、徐州市豊県で8人の子どもを持つ女性が鎖に繋がれて監禁されている様子がSNSで拡散し、衝撃を与えた。本事件の全貌はいまだ明らかになっていないが、女性に対する家庭内暴力や性的暴行が昨今中国で深刻化している。また、子どもの誘拐が後を絶たないのは、一部地域では女児が売られるようにして嫁がされ、家のための金づるになっているからだ。そうした地域では、跡取りである男児の彩礼を準備する必要から、女児を嫁に出すという男尊女卑の考え方も根強い。

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