熊本「アサリ偽装問題」が報道よりずっと深刻な訳 どの産地でも起こりうる!知られざる問題の本質

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「長期の畜養をしていない可能性の高いことを総合的に判断した」

総合的に判断? またあいまいな言葉が出てきた。続けて聞くと、DNA分析とは別の調査で、2年くらい育って出荷サイズになった中国産が大量に国内に入っていること、それが流通の過程で熊本県産にまぎれこむ可能性が高いことがわかったという。それで「総合的な判断」になったという。

同省ではこの実態を2~3年前から調べていた。いずれその結果を公表する予定だったが、1月22日にTBSの夕方の報道番組でこの疑惑が報じられたため、この期に及んでの大臣発表に至ったという。おそらくは、食品不正表示の“タレコミ”の情報提供があって調査に乗り出し、その裏取りの1つとして、昨年の3カ月間のサンプル調査があったのだろう。

それでもDNA分析の結果がそのまま食品偽装の直接証拠となるものではない。アサリの「畜養」は法律で認められている。そうであるなら、熊本県の「畜養」の実蹟を確認して97%という数値と比較検討する必要がある。

ところが、だった。その過程での意外な展開が私を驚愕させる。

そもそも“長期の畜養”がアサリには存在しない

熊本県の水産振興課に、同県におけるアサリの「畜養量」を教えてほしいと問い合わせた。和牛でいえば、飼育頭数のようなものだ。すると、そんな統計はない、と即答された。

なるほど、そんなずさんさが偽装をしやすくするのだろう、と思ったのもつかの間、そもそも、海外で生まれ育った期間よりも長く国内で育てる、いわば“長期の畜養”がアサリには存在しないというのだ。だから、そんな統計がとれるはずもない。

報道が食品表示法と産地表示のカラクリを伝え、農水省の担当者が追認することを言うから、てっきり国内での生育歴の長い「畜養」が行われているものとばかり感じていた。しかし、熊本県の担当者によると、畜養自体は行われているが、「夏を越すような長期の畜養は困難で、1~2週間の短期で出荷してしまう」というのだ。

これはどういうことか?

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