個人請負という名の過酷な”偽装雇用”

個人請負という名の過酷な”偽装雇用”

あらゆる職種で急増している個人請負。労働法はいっさい適用されず、社会保険は全額自己負担。使用者側から見れば究極の低コストワーカー。ILOでは偽装雇用と指弾された。
(週刊東洋経済2月16日号より)

 牛丼チェーン「すき家」を展開する外食大手ゼンショーから2007年11月末に届いた準備書面の内容に、首都圏青年ユニオンの河添誠書記長は目を疑った。
 
「『アルバイト』と称する者らの業務実態を精査した結果、『アルバイト』の業務遂行状況は、およそ労働契約と評価することはできないことが判明した」「会社とアルバイトとの関係は、労働契約関係ではなく、請負契約に類似する業務委託契約である」--。つまり「すき家」のアルバイトは会社に雇用されているのではなく、個人事業主として業務委託契約を結んだ個人請負だというのだ。
 
 06年に「すき家」渋谷道玄坂店のアルバイトが不当解雇を訴え組合に駆け込んだことで、同社の残業代の割増分の不払いが判明した。解雇は撤回され、ゼンショーは彼らに謝罪。過去2年分の割増賃金も支払われたが、その後、組合に加入した仙台泉店のアルバイトに対する支払いは拒絶。組合との団体交渉も拒否するようになった。組合が救済申し立てを行った東京都労働委員会の審理の場に提出されたのが、上記の主張である。
 
 個人請負となると労働基準法、労災保険法などの労働法がいっさい適用されない。その結果、解雇規制はなく、失業保険給付もない。労働時間規制がないため時間外、休日、深夜労働手当がなく、有給休暇もない。年金、健康保険もすべて自己負担だ。つまり一たび個人請負となると、非正規社員に輪をかけた「無権利状態」に置かれるのだ。
 
 こうしたゼンショーの主張に河添書記長は「東証1部上場の大会社が、こんな不誠実な主張を行っていいのか。コンプライアンス以前の問題だ」と憤る。同社の主張の根拠は、シフトをアルバイトの自発的調整に委ねている点に尽きるが、個人請負問題に詳しい東洋大学の鎌田耕一教授(労働法)は、「仮にそうした実態があったとしても、シフトに穴が開かないように最終的に会社がアルバイトの就労日、時間帯を管理しているとすれば、個人請負との主張は難しい」と分析する。「個人請負とするにはアルバイトの採用時に労働者ではないことを面接、求人票、求人広告において示しておくことが必要。また、報酬が時給で支払われていたらやはり個人請負とはいえない」(鎌田教授)。これに対して会社側は「法的手続きに沿って行っている。当方の主張は書面どおりに受け取っていただいて結構」(広報室)と語る。

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