「ジャパン・クライシス」が迫っている アベノミクスには出口がない!

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橋爪:たしかに今のところ、アベノミクスはうまく行っているように見える。国民の大多数も、なんとなくそう思っている。でも、こういう時こそあぶないと思う。

うまく行っているように見えるときは、政策転換しようとは誰も思わないので、このまま進んでいくわけです。そして、アベノミクスの本質は、対症療法にすぎない。ところが、日本経済がいま抱えている問題点の多くは、構造的で長期的なものです。ならば、少しでも体力が残っているうちに、一刻も早く構造的な問題に取り組み、快復への道筋をつけなくてはいけない。

その途中で一時的に病状が悪化したら対症療法も必要ですが、何より優先すべきは構造的で長期的な課題です。端的に言えば、1000兆円を超える累積債務を何とかして、財政を健全化しなくてはいけない。

構造的な課題は残されたまま

「アベノミクスは対症療法のかたまりです」(橋爪教授)

橋爪:アベノミクスは対症療法のかたまりですから、個別の政策が、構造的な課題とどう結びつくのかみえない。日銀による「異次元の金融緩和」にしても、貨幣供給量を増やして景気がよくなったように見えるだけで、構造的な課題にはまったく届いておらず、むしろ危機は深刻化しています。それなのに、日本経済にかかわる多くの人びとが、構造的な課題を深刻に受け止めていない。対症療法が効いたと、喜んでいる向きもある始末です。これもまた、とても危険なことだと思う。

小林:安倍政権にしても、経済成長だけでなく財政再建も目指すと折に触れてアナウンスしていますが、諮問会議等での議論より先へはなかなか進まず、具体的な政策が伴っていません。

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