NTTデータ、海外1兆円構想の勝算 国内ガリバーがM&A攻勢で海外に活路
9月中旬に米ダラスで開催したNTTデータの「グローバルカンファレンス」。世界各地から集まった幹部社員300人を前に、NTTデータの岩本敏男社長はこう宣言した。「国内売上高比率が7割以上では、まだまだグローバル企業とは呼べない。2020年をメドに、海外売上高を1兆円程度、50%以上の比率に引き上げる」。
システム構築を手掛けるNTTデータは、官公庁や金融業界に強く、業界では国内トップの存在だ。2000年代後半から、国内市場の成長鈍化を見据えて欧米中心にM&Aを繰り返し、05年に95億円だった海外売上高は約3000億円で、全体の23%に拡大した(14年3月期実績)。世界41カ国で事業を展開し、14年1月のスペイン・エヴェリス買収(売上高約800億円)や北米の成長で、15年3月期の海外売上高は4220億円、比率は30%前後に上昇する見込みだ。ネットワークやデータセンター事業者を中心に買収を進める、NTTコミュニケーションズ(以下NTTコム)とともに、NTTグループにおける海外戦略の中核企業といえる。
2008年にはSAP(統合管理システム)事業をメインに展開する独アイテリジェンスや、独BMWグループの情報システム子会社だった独サークエントを買収。10年12月に米キーンを約1000億円で買収したことで、翌12年3月期の海外事業は一気に拡大した。これ以降、100社以上あった海外子会社をNTTデータ米国、EMEA(欧州・中東・アフリカ)、APAC(アジア太平洋)、中国の地域子会社に再編し、ブランドも「NTTデータ」へと統合した。そして今年、中南米に強固な顧客基盤を持つエヴェリスが加わったことで、カバレッジは全世界に広がった。岩本社長は「顧客基盤を獲得するために各地で買収を進めてきた。世界のトッププレーヤーからの引き合いも増えるなど、ようやく世界で戦うためのファーストステージに立ったところ」と意気込む。
欧州や中国では今なお苦戦中
これだけ拡大しながら、なぜ“ファーストステージ“にとどまるのか。その理由は業績を見ればわかる。2014年3月期の海外事業は51億円の営業赤字で、今期も30億円の赤字見込みだ。各企業の買収時に想定した収益を上げられず、のれん代の償却費を吸収できていない。北米は利益が出ているものの、欧州地域は赤字続き。中国やAPACの貢献はこれから、といった状況だ。
欧州は2008年のリーマンショックに続き、10年以降のユーロ危機など経済状況が厳しいまま。中でもイタリアが苦戦中だ。昨年以降、人員削減などの構造改革に加え、各国ごとにCEOを配置、権限を委譲することで、各国独自の判断を優先して、責任の所在を明確にした。「イギリス、ドイツ、イタリアは各国のトップ10に入る規模だが、経済状況が悪く厳しい。人員削減などやれることはやった。アプリケーション運用・保守のアウトソーシングなど大型案件を獲得し、継続的に収益をあげられるビジネスを増やしたい」(EMEAのパトリチオ・マペリCEO)。
海外戦略の軸となる米国では、「8兆円程度の巨大なマーケットが存在、しかも毎年成長し続けている。今期はマーケットの伸び以上となる2ケタ成長を計画している」(NTTデータ米国のジョン・マケインCEO)。グローバル事業推進本部長の西畑一宏氏はこう見通す。「IT調査会社ガートナーによれば、今後5年のITサービス市場の成長の約半分は米国が占め、3分の1が欧州、その他は中南米だ。われわれも米国でトップ20に入る規模に成長しないと話にならない。米国を中心に存在感を高め、クラウドやBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)分野で既存のベンダーにない、新しい領域を攻める。売上高1兆円達成に必要な残り6000億円のうち、約半分はM&Aによって達成することになるだろう」。
中国ではオフショア(海外)開発モデルからの転換を目指し、現地企業の開拓を始めたところだ。APACでは製造や物流、流通系など、現地企業の案件を中心に拡大中。「ポテンシャルの大きなインドやインドネシアなどでもビジネスを広げ、将来的に海外売上高の3分の1以上をアジアで稼げるようにしたい」(APACの深谷良治CEO)。
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