「オミクロンの嵐」吹き荒れるイタリアの窮状 濃厚接触者隔離で「人手不足」「経済麻痺」の危機

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スーパーの入り口に設置された画像体温計(著者撮影)

クリスマス直前のある日、スーパーに買い物に行くと、入り口に設置されている画像体温計がオンになっているのに気づいた。パンデミックが始まってすぐに設置された、一見スマホのようなそれは、客が画面の枠内に顔を映すと体温を測定し、問題なければグリーンのライトが点灯するというもの。去年の春に第3波が落ち着いて以来、撤去はされないものの電源はずっとオフになっていた。買い物に行くたびに、使われていないのを見て平和を感じていたのだが、それがまた、オンになってしまったというわけだ。

クリスマスを境に、人と集まるため、または集まった後、検査をする人が激増した。たとえばある若者は友達と大勢でスキー旅行に行ってしまったけれど、クリスマスでおばあちゃんに会いに行くから、その前に検査をしておこう。そんな感じで、なにかしら心当たりがある人たちが万全を期すために検査に走った。その結果、隠れ感染者があぶり出され、感染者数が激増した。感染者が増えれば濃厚接触者も増える。運悪く感染してしまった人、濃厚接触者になってしまった人たちは、隔離や自粛が義務付けられる。隔離を始め、隔離を終えるためには、その都度検査を受け、証明書を得る必要がある。それでさらに検査をする人が激増した。今イタリアでは毎日100万人程度が検査を受けているという。

ところがその検査が曲者だ。薬局などで簡単にできるスピード検査では何度も陰性だったのに、PCR検査をしてみたら陽性だったという人たちが増えた。じゃあ、並んで検査しても意味ないじゃん!と思っていたら、フランスで感染者が30万人を記録した1月5日、こんなニュースがイタリアを震撼させた。

「PCR検査で陽性の人の40%は、スピードテストで陰性と出る可能性がある」

元欧州医薬品長の事務長で、現コロナ抑制政策委員会アドバイザーを務めるグイド・ラーズィ医師の声明だった。だからといって、より正確なPCR検査は実施機関も限られ、時間もコストもかかるため、予約待ちでなかなか順番が回ってこないのが実情だという。たとえば1月初旬のローマでは、平均1週間も待たされるらしい。

病院の前で待機する「救急車の列」

感染者の激増にともなって、入院患者も増えてきた。テレビでは病院に入ることができずに待機する救急車の列を映し出していた。病床の占有率が高くなった州では、久々のイエローゾーンが復活した(イタリアが第2波、3波で適用していた感染対策の1つ。イエロー、オレンジ、レッドと色が濃くなるにつれて外出規制が厳しくなる)。イエローゾーンになる州はどんどん増えて、今ではロンバルディア州(州都ミラノ)、ヴェネト州(同ヴェネチア)、ピエモンテ州(同トリノ)、リグーリア州(同ジェノヴァ)など10州がイエローゾーン、1月10日からはエミリア・ロマーニャ州(同ボローニャ)、トスカーナ州(同フィレンツェ)など5州も加わることが決まったうえに、リグーリア州やピエモンテ州はオレンジゾーンに「格上げ」になると見られている。

イエローゾーンになってもワクチン接種済み、またはコロナ回復証明のスーパーグリーンパス(ワクチン接種完了者、およびコロナ回復者のみが得られる)があれば、普通に外出もできるしレストランなどへも行ける。だから具体的に規制を受けるのはワクチンをしていない人たちに限られるのだが、感染者数があまりに増えすぎると、呑気にそんなことも言っていられなくなってきた。

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