すき家、「ワンオペ解消」の目算が外れたワケ なぜ深夜営業の大量休止に追いこまれたのか

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都内の店舗。10月1日から深夜帯の営業を休止。24時間営業の表示部分(写真左)は黒くなっている

もっとも、業界全体が深夜帯の人員確保に苦慮しているわけでもなさそうだ。居酒屋大手の首脳は「3~4月は採用が厳しかったが、5月以降から回復傾向に入った」(居酒屋大手の首脳)と話す。すき家の場合、第三者委の提言からワンオペの実態が改めてクローズアップされたことで、採用活動に逆風が吹いたと考えられる。

ワンオペ解消には採用のほかに、1店の深夜営業を休止し、近隣の店舗に人を移すという方策も講じていた。これについて「完全ではないにしろ、一定の成果はあった」(ゼンショーHD)。しかし、都心から離れると、店舗間の距離が広がることから、人のやりくりが難しくなった。

深夜営業休止の影響

ゼンショーでは今年6月から7つの地域会社を設立し、すき家を運営する体制に切り替えている。この地域別でみると、深夜営業の休止店舗の割合が全国ベースで約6割なのに対し、中部地域は約8割と突出して高い。愛知県を中心に自動車など、製造業の繁忙が続いており、多くの外食業者が「中部は特に人材確保が厳しい」と異口同音に口にするエリアだけに、ゼンショーも人手の確保に苦戦したとみられる。

外食業界では、既存店売上の推移から成長の度合いを見るのが一般的だが、「前年とのトレンドの変化を見て欲しい」(ゼンショーHD)との理由から、すき家は今年4月から既存店の基準を変更し、一時休業や営業時間を短縮した店を含めないようになった。10月は24時間営業店が減るため、新基準での「既存店」は全体の約3割しかない。

ちなみに今上期(4~9月)の既存店売上高は前年同期比5.2%増だが、人手不足による一時休業も響き、全店売上高は3.2%減となっている。今回、深夜休業店が大幅に増えたことで、今期のすき家の実態を表す全店ベースの売上高は一層厳しい数字が続きそうだ。

又吉 龍吾 東洋経済 記者

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またよし りゅうご / Ryugo Matayoshi

2011年4月に東洋経済新報社入社。これまで小売り(主にコンビニ)、外食、自動車などの業界を担当。現在は統括編集部で企業記事の編集に従事する傍ら、外食業界(主に回転ずし)を担当。趣味はスポーツ観戦(野球、プロレス、ボートレース)と将棋。

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