産業リサーチ(IT産業) 企業の情報化投資が構造的に下方シフト

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昨年の夏以降、急激に企業の情報化投資が冷え込んだ。果たして、これは景気低迷によるによる循環的なものなのか、それとも構造的な変化が起こっているのか。
 景気の先行きに対する不安が、企業の情報化投資を抑えたのは確か。ただ、結論から言えば、企業の情報化投資の成長率は下方屈折したようだ。世界的なハイテク市場の調査会社であるIDC(JAPAN)の見通しよれば、わが国企業の情報化投資は、2002年から2007年までの年平均成長率で2.2%にとどまる。2002年の市場規模は前年比2.4%減の1兆2121億円、2007年では1兆3487億円との予想。1990年代の二ケタ成長は過去のものといってよい。
 その成長もハードウエアの低迷とソフトウエア、サービスの伸びで、プラス成長を確保する。5年間の平均成長率はハードウエアが0.2%、ソフトウエアが5.2%、サービスが2.7%。しかも、ソフト、サービスの伸び率も低下する。要因は大きくいって3つある。1つ目が価格競争の激化、2つ目がシステム構成の変化、3つ目が企業サイドの投資行動の変化である。「価格圧力は強い、それがハードからソフト、サービスにも広がってきた」(IDCジャパン・佐伯純一シニアITアナリスト)。
 周知のように、現在のシステムはメインフレームを中心にしたものから、オープン系のシステムに移行している。メインフレームを軸としたシステムの時代はオーダーメイドであり、価格はいわばブラックボックス。情報サービス会社に主導権があった。オープン系のシステムでは、OS(基本ソフト)もアプリケーション・ソフトも標準化され、価格も透明度が増すため、価格競争が激しくなる。企業サイドも情報化投資の経験を積み、情報サービス会社の「言われるまま」から、「必要なものに絞り込む」姿勢が目立つようになった。
 情報サービス企業から見れば、得意先のシステム構築のために「人材派遣」を行っているだけでは高収益は望めない。付加価値を生み出す「何か」が必要になる。それはシステム・コンサルティングなのか、アウト・ソーシングの受託なのか、あるいは特定業種への絞込みなのか。構造変化とともに、「コア・コンピタンス」を求めて、本当の戦いが始まっている。
【原英次郎記者】


(株)東洋経済新報社 電子メディア編集部

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