米テスラの「極秘プラン」は実現するのか テスラモーターズのマスクCEOに直撃

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――今年の6月にはテスラの特許開放という、自動車業界としては前代未聞の決断に踏み切った。

これも業界他社のEVビジネスを手助けしたいゆえのこと。われわれがやっていることはジャングルの中で道を切り開くようなものだ。後ろに地雷を埋めるようなことはしたくない。EV開発を進めたい人の邪魔をしたくはないんだ。

EVの発展を妨げるさまざまなものを取り除こうとしている。特許を開放しなくても可能だったかもしれないが、特許保護によって手にするわれわれの競争力は、EV産業全体の犠牲の上に成り立つことになってしまう。だからこそ、すべての自動車メーカーにEVビジネスへの参入を促しているのだ。

 短期利益よりも量産を優先

――利益に対する考え方を聞きたい。自動車だけでなく、ビジネス自体を「持続可能」なものとするためには、一定程度の利益を出すことも必要ではないか。これまで黒字が出たのは13年の第1四半期のみだ。

事業を急拡大させ、大きな設備投資をしている間は、黒字化というのは難しい。もちろん、われわれはそれらのペースを落とすこともできる。そうすれば利益は確実に出る。しかし、私が重要視しているのは、短期利益よりも、EVを長期でより良いものにし、生産を最大化させること。これは単なる選択に過ぎない。ゆっくりやって利益を出すか、早く進めて利益は二の次か。私は後者を選んだ。

―― 一方で株価はうなぎ上りだ。

(株主とのコミュニケーションに関しては)うまく行き過ぎているかもしれない。車の生産台数と比較すると、テスラの株価は極めて高いと思うだろう。そう指摘する人も実際多い。今年3万5000台しか販売しない会社の株式時価総額が、いったいなぜフィアットやクライスラーより大きく、GMやフォードといった大会社の半分ほどにまでなっているのだろうか。このバリュエーションの高さには、将来への期待感がたぶんに織り込まれているのだと思う。長期保有の株主らの判断は正しいだろう。しかし短期利益を求める株主にしてみれば、株価の乱高下は予想しえないことだ。

中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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