楽天は、なぜ「1000億円M&A」を決めたのか? 三木谷浩史会長兼社長が語る戦略の核心

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三木谷でも彼らは考えたんだと思います。IPOをしてスタンドアローンでやっていく場合、国際展開はどうするんだ、とか。それはそれで大変なことなので、だったら楽天と組んだほうがいいと判断したんだと思います。

山田: なるほど。

三木谷:しかもIPOをしても、売るほうの株主は、すぐに全ての株式を売ってキャッシュ化できるわけではない。着実に売却してしまうのであれば、全株式を一気に売った方がいい。それだけでなく、楽天はEbatesのモデルや、顧客へのサービスを非常に深く理解しているので、責任を持った対応をしてくれるであろうと考えたのではないかな、と思います。

山田:ケビンCEOはアリババの話もしていた。アリババのIPOを前に、IPOが難しいという雰囲気はあるのでしょうか。

三木谷:それは分からないですね。

競合のことを意識しても仕方がない

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左は8月に買収したSlice Technologiesのスコット・ブラディCEO、右がEbatesのケビン・ジョンソンCEO(9月9日の記者会見にて)

山田:アリババは最大で2.5兆円を調達する。この調達規模は非常に大きいですよね。このインパクトは相当あるでしょうね。

三木谷:真面目な話、それはちょっと分からないです。

山田:アリババがどういう競争を仕掛けてくるのか、気になりませんか。

三木谷:確かに、中国の競争は中国の競争で大変だと思いますよ、テンセントも伸びていますし、アリババも大変だろうな、と思います。ただ、私の耳に競合の状況についての情報が入るにしても、だったらこうしよう、という対策を打てるわけではない。やっぱり自分たちが考えているオリジナルなモデルを追求していくことによって、着実に成長していくしかないんです。

もしかしたらアリババがすごく大きくなるかもしれないけども、それは私にどうすることもできないので、どうすることもできないことを考えても仕方がないんですよね。

競争関係はいろいろ変わっていきますが、ご存じのように楽天は今まで常に新しい展開をしてきたじゃないですか。単純なイーコマースから複合的エコシステムへ進化しましたし、野球への参入もそうですけれども。、新しいことを次々にやってきた。海外展開においても今回のEbates買収、Viber買収に関しても、他社が取らなかった手を取ってきていると思うんですね。もともと僕の性格もそうですし、他社の真似をするのではなく、自分がこういう風になっていくであろうな、という将来ビジョンに沿ってやっていく。そしてデータに基づいた打ち手を着実に打っていくというスマートな戦略をこれからも展開していきます。

山田:ケビンさんは、熱い志を共有できる経営者なわけですよね?

三木谷:ケビンも、スコット(・ブラディ・Slice Technologies CEO)も、インテリジェントなプロ。彼らが楽天USAのマネージメントに入ってきますから、これは大きいですよ。

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山田 俊浩 東洋経済 記者

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やまだ としひろ / Toshihiro Yamada

早稲田大学政治経済学部政治学科卒。東洋経済新報社に入り1995年から記者。竹中プログラムに揺れる金融業界を担当したこともあるが、ほとんどの期間を『週刊東洋経済』の編集者、IT・ネットまわりの現場記者として過ごしてきた。2013年10月からニュース編集長。2014年7月から2018年11月まで東洋経済オンライン編集長。2019年1月から2020年9月まで週刊東洋経済編集長。2020年10月から会社四季報センター長。2000年に唯一の著書『孫正義の将来』(東洋経済新報社)を書いたことがある。早く次の作品を書きたい、と構想を練るもののまだ書けないまま。趣味はオーボエ(都民交響楽団所属)。

 

 

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