ジェネリックが製薬界の想定超に伸びる理由 特許切れ新薬に頼る中堅メーカーに打撃

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特許の有効期間が切れた新薬と同じ有効成分で作られ、価格は新薬の約2~6割――。ジェネリック医薬品(後発薬)が、急速に勢力を拡大し始めている。

政府は2014年度の診療報酬改定で、包括評価制度の対象であるDPC病院(大病院とほぼ同義)について、診療報酬に大きく影響する後発医薬品係数を導入。調剤薬局についても後発医薬品の割合に応じて報酬が上乗せになる「調剤体制加算」を強化した。要は病院、調剤薬局でジェネリックを使えば使うほど、収入が増えるようにした。

「12年度に30%」の目標は未達

ジェネリックの普及拡大は、医療費の財政圧迫軽減を狙った政策だ。もともと政府は2012年度までにジェネリックの数量シェアを30%にする目標を掲げていたが、実績は約25%と大きく未達。そのため、算式を変えた新基準で2017年度に同60%(旧算式では34.3%、2012年度比9ポイント弱向上)の達成を掲げ、その一環として今回の報酬改定を実施した。

この影響が製薬業界、特に特許の切れた新薬である「長期収載品」を持つ製薬メーカーに及んでいる。直近の2014年度第1四半期(4~6月期)は、長期収載品の数量が想定を超えて減少したのだ。

医師は投薬については「使い慣れ」を重視する傾向があり、同じ成分のジェネリックがあっても長期収載品を処方しがち。これまでは、調剤薬局も公定価格と卸からの仕入れ値の差である「薬価差益」が多く取れるため、医師の処方箋に従っていた。

ところが、調剤体制加算の強化を受けて、調剤薬局は処方箋に医師からの「ジェネリックへの変更不可」の指示がなければ、どんどんジェネリックを処方し始めた。大病院内の薬局も同じ。薬剤部が切り替えを始めている。

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